2000 年 29 巻 2 号 p. 365-368
1983年4月から1999年3月の問に当科にて超低体温, 選択的脳灌流を用いて施行された弓部大動脈全置換術25例中, 術死2例を除く23例を体外循環中の抗凝固の方法に関してA群 (6例): Nafarnostat mesilate (NM) 非使用+ヘパリン (HP) 3mg/kg, B群 (9例): NM使用+HP3mg/kg, C群 (8例): NM使用+HP1.5mg/kg使用の3群に分類し, 後方視的に検討した。手術時間はA群がC群に比し有意に長く, 術中出血量はA群がB, C群に比し有意に多かった (A群4076±2371m1, B群1581±1354rn1, C群1997±904m, P<0.005) 。体外循環中の出血による濃厚赤血球の使用はC群がA, B群に比し有意に少なかった。すなわち, NM使用により術中出血は減少し, さらにヘパリン量を減少することで体外循環中の血液使用量は節減できた。しかし, NM使用に伴うヘパリン量の減少は術中出血量を減少することはなく, 体外循環後の出血が多い傾向が認められ, この点については, 今後の検討すべき課題と思われた。