人工臓器
Online ISSN : 1883-6097
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29 巻, 2 号
選択された号の論文の37件中1~37を表示しています
  • 大越 隆文
    2000 年 29 巻 2 号 p. 299-300
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
  • 岡本 英治, 馬場 一弘, 鈴木 伸也, 岩澤 英智, 福岡 慎一, 三田村 好矩, 斉藤 逸郎, 望月 修一, 阿部 裕輔, 磯山 隆, ...
    2000 年 29 巻 2 号 p. 301-307
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    体内-体外間の双方向高速データ伝送を目的に, 電磁誘導を応用した経皮的デジタル情報伝送システムの開発を行った.変調はASK (Amplitude Shift Keying) 変調とし, 搬送波周波数は双方向同時伝送で干渉が起きないよう信号波周波数分布を考慮し, また電磁波の生体組織透過性も考慮し, 4MHzと10MHzとした.体内ユニット, 体外ユニットともに, ワンチップマイクロコンピュータを中心に, 体内への埋込みを考慮し小型化に努め設計を行った.体内埋め込み後の装着性を考慮し, 両ユニットの形状はCAD/CAM技術を応用し製作した.その結果, 各ユニットの大きさはシリコーンゴムによるモールド後, 直径45mm, 厚み8mmとなった.生体組織を使用してのin vitro実験の結果, 経皮的エネルギー伝送の影響を受けることなく軸方向7.5cm, 横方向±4cmの範囲で伝送可能であった.動物実験を2例行った結果, 埋め込み時の体内装着性と87日間の安定な動作を確認し良好な結果を得ることができた.
  • 岡本 英治, 鈴木 伸也, 馬場 一弘, 岩澤 英智, 福岡 慎一, 三田村 好矩
    2000 年 29 巻 2 号 p. 308-314
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    体内埋込型人工心臓装着患者の遠隔管理システムを対象に, 患者体内から送られてくる人工心臓駆動情報よリニューラルネットワークにより患者血圧の推定を試みた。ニューラルネットワークによる血圧推定は時系列問題として考え, また血圧を平均血圧と脈波成分に分け推定を行い, その推定結果を合成し血圧波形として提示する。モータ電流, モータ回転角度を微分して得られるポンプ拍出量を入力とし, 容態が安定した状態で各人工心臓装着患者ごとにニューラルネットワークを学習させ, 退院後PHSにより送られてくる人工心臓駆動情報を入力に患者血圧を推定し患者と人工心臓の異常早期発見に応用する。考案した血圧推定法をin vitro実験で検討した結果, 人工心臓駆動条件の変化時, 人工心臓の異常発生時, そして患者血行動態の末梢血管抵抗変化時にも, それぞれ良好に追従し血圧推定を行うことができ, 人工心臓装着患者の遠隔管理に極めて有効と思われる。
  • 3対3光素子を用いた経皮光カプラの検討
    谷川 大祐, 柴 建次, 越地 耕二, 土本 勝也, 塚原 金二, 巽 英介, 妙中 義之, 高野 久輝
    2000 年 29 巻 2 号 p. 315-321
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    発光素子にLD(Laser Diode), 受光素子にPINPD(PIN Photo Diode)を用い, それを3対3に配置した経皮光カプラを試作し, 1対1経皮光カプラとの比較, 検討を行った。3対3経皮光カプラの試作には, 生体埋め込み可能な大きさとするため, 半径20mm, 厚さ15mmの円形とし, 全体をシリコーンコーティングした。実験方法として, シリコーンの有無および皮膚を介した場合について, それぞれ素子間隔に対する最大偏心許容距離を測定した。さらに, 発光素子の相対強度を算出することで, シリコーンの有無及び皮膚の影響を検討した。その結果, 今回試作した3対3経皮光カプラによって, 経皮光カプラを360°一回転させても情報伝送可能となり, 最大偏心許容距離は, 従来式に比べ著しく増加した。また, 消費電力は, TAHと比べ充分小さく, より信頼性の高い経皮光テレメトリシステムの構築が可能となった。
  • 結城 明, 羽藤 栄記, 野川 雅道, 高谷 節雄
    2000 年 29 巻 2 号 p. 322-327
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    三点支持型シールレス小型遠心ポンプの設計・試作を行い, その評価及び駆動制御に関する検討を行った。小型のDCブラシレスモータを用いてドライバ部及びポンプハウジング部もコンパクトなものに変更された。3D-CADを用いてデザインされた小型遠心ポンプが試作された。ポンプドライバ部は半径60mm, 高さ28mmとなり, 重量は230gであった。また, ポンプハウジングは半径60mm, プライミングボリューム25m1, 重量220gであった。三点支持機構は三個のセラミックボールとポリエチレン製の溝で構成されており, インペラーが底面だけで支持されているため, インペラー上部軸受けが不要となり, 流入ポートの取付け角が自由になるという特徴を持つ。ポンプスピード1000rpmから2200rpmの範囲において30mmHgから150mmHgの揚程が得られ, 最高システム効率は12%となった。さらに, モータ電流波形に基づく循環動態解析への応用についても検討した。
  • 古川 博史, 西田 博, 大塚 吾郎, 山崎 健二, 川合 明彦, 青見 茂之, 八田 光弘, 遠藤 真弘, 小柳 仁, 遠山 範康, 岡本 ...
    2000 年 29 巻 2 号 p. 328-331
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    経皮的心肺補助装置 (PCPS) は強力な循環補助システムとして心原性ショックや周術期循環補助に対して普及している。今回我々は, CAPIOXEBS (EMERSAVE) の臨床使用経験と回路の工夫について検討した。症例は92年から99年に循環補助を施行した35例で, 25例が大腿動静脈からカニューラを挿入, その他10例は臨床状態に応じてカニューラ挿入部位を選択した。95年以降ヘパリンコーティング回路を使用し, 96年よりAVシャント付きソフトリザーバーを付加した回路を使用し, 98年以降熱交換器付膜型人工肺を組み込んだ回路を使用した。循環補助時間は62分から256時間, 平均47.3時間で, 13例 (37.1%) が離脱し5例 (14.3%) が生存退院した。病状に応じて迅速に導入できるカニューレ挿入部位や, 体温調節やボリューム管理可能な回路の選択により病態に応じた緊急循環補助システムの確立が可能であった。
  • 井手 博文, 野中 健史, 藤木 達雄, 佐藤 政弥, 遠藤 英仁, 須藤 憲一
    2000 年 29 巻 2 号 p. 332-336
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    PCPS装着時に, 左室後負荷軽減の為に併用される経大動脈弁的左室ベントカテーテルの挿脱着が可能な, 新しいIABPカテーテルを開発し, 臨床応用に向けて評価を行った。対応するベントカテーテルはthin wall, 外径12F, 全長95cm, テフロン製。IABPカテーテルの構造として, 容量35ccバルーンおよびバルーンガス給排管としてのカテーテル (外径7F, 全長65cm) に加え, 左室ベントカテーテルが通過可能な, 全長約20cm, 外径5mm, ポリウレタン製の挿通管を, バルーン部のみに有し, その先端にベントカニューラ抜去後閉鎖するシリコンゴム製弁を有する。ベントカテーテルは, 同挿通管を介して, 経大動脈弁的に左室に挿入される。ベントカテーテル操作向上の為, 同挿通管内面をシリコンコーティングすることにより, 滑り抵抗は約1/2に軽減した。ベントカテーテルは, モック試験にて, 最大流量, 約600m1/minが可能であった。
  • 今西 薫, 井街 宏, 阿部 裕輔, 鎮西 恒雄, 望月 修一, 磯山 隆, 斉藤 逸朗, 小野 峻哉, 河野 明正, 土肥 俊之, 吉戸 ...
    2000 年 29 巻 2 号 p. 337-344
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    今回我々は経大動脈的左心補助循環装置 (Heart Ranger;H-Ra) を臨床応用するために, in vitro, in vivoで種々の検討を行った。H-Raの設計の主な特長は1) 血液ポンプは空気駆動型 (Diaphragm Type) とし外形は円盤型とし, カニューレの外径を7, 9, 11, 13mmと4種類設計した。カニューレに金属製のスパイラルを埋没させ強度を増加させた.模擬循環回路による最大流量の測定ではIABPの駆動装置で3.1l/min, 人工心臓の駆動装置 (AISINCORAT) を使用した場合3.7l/minであった。成ヤギを使用した補助効果の検討ではH-Ra補助により種々の血行動態で強力な補助効果を認めた。補助率 (心拍出量に対するポンプ流量の比) は41~69%であった。慢性動物実験でも13日間2.0l/rnin以上の安定した補助流量を維持した。H-Raは有効性, 安全性の点で臨床的に使用可能と考えられた。
  • 佐藤 政弥, 井手 博文, 藤木 達雄, 遠藤 英仁, 須藤 憲一
    2000 年 29 巻 2 号 p. 345-350
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    経皮的心肺補助 (PCPS) は簡便かつ迅速に導入可能であり, 緊急を要する急性循環不全に対する有用性が報告されているが, その緊急性からASOの合併は挿入前に未評価のことが多く, 下肢虚血からMyonephoroticmetabolic syndrome (MNMS) を併発し致命的となった症例も経験している。今回緊急にPCPSを導入した26例の下肢虚血について検討した。合併症としての下肢虚血の頻度は全体の27%, 死亡例では基礎疾患以外の死亡原因の約30%を占めており重要な合併症であることが示唆された。非虚血性心疾患での下肢虚血の合併頻度が7%であるのに対し, 虚血性心疾患では50%と有意な関連性を認めた。下肢虚血例での酵素系の検討ではCPKが有意に上昇を認め, 下肢虚血の評価に有用であると思われた。静脈点滴用留置針による下肢送血を行った症例では下肢虚血の理学所見, 血清逸脱酵素の上昇共に認めず, その対処法として有効であった。
  • システム構築とその評価
    羽藤 栄記, 結城 明, 野川 雅道, 菊川 大樹, 村上 泰冶, 高谷 節雄
    2000 年 29 巻 2 号 p. 351-355
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    本研究では, 圧・流量等の埋め込み式センサを使用しないポンプ制御方法の1つとして, 心電図等から心拍数を取得し, その変化をポンプ回転数の増減に反映させるプロセスと, 遠心ポンプのモータ駆動電流波形を使用し, その波形の周波数解析から自然心の拍動により生じる基本波と, 狭窄・逆流時に顕著に表れる高調波との比率を求めるWaveform Deformation Index (WDI) 利用した吸付・逆流の検知・回復プロセスから成り立つ制御システムを開発した。制御システムは, パーソナルコンピュータ (PC) 及びDigital Signal Proces-sor (DSP) ボードを用いて構築し, その基本的な評価を, 摸擬心室を使用した摸擬循環回路で行った。目標流量決定プロセスおよび, 吸付の検知・回復のプロセスともに良好な結果得ることができた。制御システムのアルゴリズム等, 今後の詳細な検討が必要ではあるが実用化の可能性が示唆できた。
  • 森田 雅教, 四津 良平, 又吉 徹, 加藤 木利行, 上田 俊彦, 申範 圭, 饗庭 了, 志水 秀行, 川田 志明
    2000 年 29 巻 2 号 p. 356-359
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2011/06/02
    ジャーナル フリー
    近年, 陰圧吸引補助脱血 (vacuum assisted venous return: VAVR) は体外循環の脱血方法のひとつとして注目されている。通常の体外循環回路にバキュームコントローラーを追加するだけで, 簡単にVAVRを行うことはできるがVAVRの持つ様々な利点をさらに活用するためには, VAVRに適した体外循環回路を使用する必要がある。今回, 我々はVAVRの導入にあたり, 静脈貯血槽をバイパスする回路を有したVAVR用体外循環回路を作成し臨床に使用した。対象は96年10月から99年4月に行われた325症例で, VAVRの導入により, 充填量の低減, 小口径カニューレの使用が可能となった。また体外循環離脱時にバイパス回路を使用することで, 非常に優れた操作性を得ることができた。
  • 多賀 一郎, 舟久保 昭夫, 熊谷 剛, 安田 利貴, アハメド シャハリアル, 河村 剛史, 福井 康裕
    2000 年 29 巻 2 号 p. 360-364
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    外部灌流型人工肺のガス交換能や長期使用時における血栓形成等に関する問題は血液の流動状態に大きく依存する。現在まで我々は人工肺のCFD (Computational Fluid Dynamics) を用いたシミュレーションにより解析を行い, すでにその流動状態が実測結果とほぼ同様な傾向を示すことを確認した。そこで今回は圧力損失に重点を置き, 実際の人工肺との比較検討を行った。また, 血栓形成部位と流れの解析結果についても比較検討した。その結果, 実測値同様に圧力損失は流量に比例して増加する傾向を示し, 低流量域ではほぼ一致した。しかし, 高流量になるに従い実測値の方が高くなり双方の差も約10mmHgと大きくなった。また, 流れの停滞部位と血栓形成部位との関連性について確認することができた。以上よりCFDを用いた解析は人工肺の設計段階における簡易的な圧力損失, 血栓形成部位の把握に有用であると考えられた。
  • 出血防止を目的として
    中村 都英, 矢野 光洋, 鬼塚 敏男
    2000 年 29 巻 2 号 p. 365-368
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    1983年4月から1999年3月の問に当科にて超低体温, 選択的脳灌流を用いて施行された弓部大動脈全置換術25例中, 術死2例を除く23例を体外循環中の抗凝固の方法に関してA群 (6例): Nafarnostat mesilate (NM) 非使用+ヘパリン (HP) 3mg/kg, B群 (9例): NM使用+HP3mg/kg, C群 (8例): NM使用+HP1.5mg/kg使用の3群に分類し, 後方視的に検討した。手術時間はA群がC群に比し有意に長く, 術中出血量はA群がB, C群に比し有意に多かった (A群4076±2371m1, B群1581±1354rn1, C群1997±904m, P<0.005) 。体外循環中の出血による濃厚赤血球の使用はC群がA, B群に比し有意に少なかった。すなわち, NM使用により術中出血は減少し, さらにヘパリン量を減少することで体外循環中の血液使用量は節減できた。しかし, NM使用に伴うヘパリン量の減少は術中出血量を減少することはなく, 体外循環後の出血が多い傾向が認められ, この点については, 今後の検討すべき課題と思われた。
  • 村山 弘臣, 玉木 修治, 加藤 紀之, 成田 裕司, 横手 淳, 六鹿 雅登, 岡田 正穂, 小山 富生, 山田 哲也, 片山 浩司, 高 ...
    2000 年 29 巻 2 号 p. 369-374
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    赤外線酸素モニター (NIR) の意義について, 因子分析を用いて統計学的に検討した。待機的冠動脈バイパス66例 (321測定点;男: 女=50: 16, 年齢30~74 (平均63.8±9.9) 歳) を対象とした。体外循環中の各測定点で撓骨動脈圧, 中心静脈圧, 肺動脈圧, 体外循環灌流係数, 食道温を記録した。血液ガス分析を行い, 動脈血ヘモグロビン濃度, 動静脈血酸素・二酸化炭素分圧, 酸素飽和度を求めた。NIRを用いて脳内酸化, 還元, 総ヘモグロビン濃度を計測した。各測定値は因子分析 (主因子法, 75%分散法, バリマックス回転) を用いて解析した。結果として7因子が抽出できた。それらは因子負荷量から「酸素」, 「脳内酸素」, 「二酸化炭素」, 「左心系」, 「右心系」, 「灌流係数」, 「血色素」と解釈できた。NIRによって計測した脳内酸化, 総ヘモグロビン濃度は「脳内酸素因子」によって構成された。よって, NIRは他の各パラメーターと独立した新指標であることが示された。
  • 上屋敷 繁樹, 染谷 忠男, 橋本 和弘
    2000 年 29 巻 2 号 p. 375-378
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    目的: 体外循環灌流温度の相異が脳代謝に及ぼす影響を検討をした。対象と方法: 1998年の4月~1999年3月までの冠動脈バイパス症例65例中脳合併症の既往がない30例を対象とし, 体外循環 (CPB) 中の温度を30℃で行ったC群 (n=10), 36℃で行ったW群 (n=10) ・36℃で大動脈バルーンパンピングを体外循環中に作動させたP群 (n=10) の3群に分けた。結果: (1) 3群全例に術後, 脳合併症は認められなかった。 (2) Sjvo2と乳酸値はW群でC群より低い値を経過中示したが3群間に有意差を認めなかった。 (3) CPK-BBはP群がC群に対して大動脈遮断解除後以降有意に低い値を示した (p<0.01) 。さらにW群に対しても同様にP群は大動脈遮断解除後10分後, CPB終了, CPB30分後, ICU入室後で有意に低値を示した (p<0.01) 。結語: 常温体外循環は中等度低体温体外循環よりSjvo2は低下しているものの有意ではなく, CPK-BBは中等度低体温体外循環より低く, 安全性が確認された。必要によっては常温体外循環に拍動を加えることで, さらに安全性は高まり, より理想的な脳保護になりうると考えられた。
  • 三浦 誠, 辻野 智二
    2000 年 29 巻 2 号 p. 379-383
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    機械式人工弁が植え込まれた患者において, 超音波ドプラ法により中大脳動脈血流の計測を施行した際に, 強度の高い一過性の信号 (HITS) が検出される場合があり, 人工弁周囲で生成するキャビテーション気泡との関連が示唆されている。我々は開放不全の大動脈弁モデルを作成し, キャビテーションの初生条件および生成した気泡の挙動について実験的に検討した。その結果, 60°の開放制限モデルでは10.21/minの順行性流れにおいて径50~400μmのキャビテーション気泡が初生することが示された。生成した気泡は, 15cm下流では消滅したが, 60cm下流では径5~25μmの微小気泡核として安定して存在し, HITSの原因になりうると考えられた。
  • 岩崎 清隆, 梅津 光生, 井街 宏, 藤本 哲男
    2000 年 29 巻 2 号 p. 385-389
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    高分子製人工弁の加速耐久試験方法に関してはISOでも規格が確立されていない。そこで, Jellyfish弁を使用し, 通常行われている圧力及び温度を基準とした加速耐久試験が高分子製人工弁に適用可能かを検討した。その結果, 1200BPMで行った加速耐久試験と105BPM程度で行った慢性動物実験では, 弁破断部位及び弁が破断に至るまでの開閉回数のいずれも一致しなかった。この弁破断位置の違いの原因を究明するために, 有限要素法を用いて力学的な解析を行った。その結果, 加速耐久試験では応力集中する部位で脆性破壊しているのに対し, 慢性動物実験では, 閉鎖時の変形によってひずみの集中する部位で延性破壊していることがわかった。したがって, 両者の破壊メカニズムは根本的に違うものであることがわかり, 現行のISOで定められた加速試験では, 高分子製弁の耐久性予測に限界があることが示唆された。
  • 松居 喜郎, 宮武 司, 八田 英一郎, 国原 孝, 西部 俊哉, 椎谷 紀彦, 村下 十志文, 安田 慶秀
    2000 年 29 巻 2 号 p. 390-393
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    SJM弁の3例, Omniscience弁の4例に遠隔期機能不全のため再手術を施行した。年齢は34~68歳, 男性3例, 女性4例で, 1例を除き全例心房細動を有していた。Omniscience弁は初回一再手術期間はM弁位で60±33カ月の再手術時23~55度の開放制限があった。A弁位の1例は187カ月後の再手術時30度の開放角であった。SJM弁ではM弁位の1例は手術62カ月後に一葉が完全閉鎖。A弁位の1例は手術219カ月後に圧較差が55mmHgとなった。摘出したOmniscience弁はhingeの部位に小さなpannusが入り込み開放制限を起こしていた。SJM弁では, M弁位の1例は心房側で後尖側の一葉がpannusで覆われ固定されていた。A弁位の1例は左室側にpannusが張り出し弁口を閉塞していた。今後術後追跡期間の延長に伴い, 同様の機能不全の可能性があり注意を要する。
  • 小川 英幸, 石川 利之, 住田 晋一, 小林 泉, 菅野 晃靖, 重政 朝彦, 猿渡 力, 木村 一雄, 梅村 敏
    2000 年 29 巻 2 号 p. 394-397
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    心内P波高を長期連続記録できるシングルリードVDDペースメーカーを植え込んだ6症例 (62.3±17.8歳, 平均±標準偏差) において, 外来で心房感度を変え測定した閾値とこのヒストグラムとを比較検討した。P波アンプリチュードは8範囲 (ビン) に分かれて記録される。心房感度を順次鈍くしていくことにより測定を行う従来法によるセンシング閾値の1/2とこのヒストグラムの最小値を含むビンの下限値との間に有意な正の相関を認めた (r=0.77, p<0.0001) 。またヒストグラムの下限値に対し従来法による閾値の1/2は有意に大であった (0.53±0.37vs0.64±0.40, p<0.05) 。6例中3例においてヒストグラムでのセンシング不全を認めた。P波アンプリチュード・ヒストグラムは従来法で検出不可能なP波の電位の分布を確認することができる点で有用であり, このヒストグラムを用いることで必要な心房感度設定を適正化することが可能になると考えられる。
  • 横瀬 誠治, 宮本 二郎
    2000 年 29 巻 2 号 p. 399-406
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    透析中に血圧低下を来しやすい患者15例を対象に, 均等UFR, 血液量モニター (Blood Volume Monitor;BVM), BVM+血液温度モニター (Blood Temperature Monitor;BTM) による透析を行い, 平均血圧 (MAP), 昇圧処置頻度を比較検討した。均等UFRは透析後半にMAPの下降を示すが, BVMはその維持が容易となった。DMを有する症例では高いUFRセットポイント時期にMAPの下降を示すことがあるが, BVM+BTMでは有意に改善された。均等UFRとBVMでは, 透析開始とともに動脈側血液温度 (arterial blood temperature;Tart) が上昇傾向を示すのに対し, BTM時は, 透析液温度を積極的に変化させることで, 透析開始時のTartを終了時まで維持した。透析中のMAPの維持は, 均等UFR<BVM<BVM+BTMで, 昇圧処置頻度は, 均等UFR>BVM>BVM+BTMの結果となり, BVMでUFコントロールするだけでなく, 透析中の体温変動を抑えることで循環動態の安定性がはかれ, BTM併用の有用性が確認された。
  • 錦 健太, 山縣 邦弘, 富田 知栄, 渡辺 泰徳, 小山 哲夫
    2000 年 29 巻 2 号 p. 407-410
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    無尿, 維持透析患者に対する開心術後の透析に非透析患者の術後経過が応用可能か検討した。まず開心術を施行した非透析患者10例について6時間ごとにSwan-Gantzカテーテルによる血圧, 右房圧, 肺動脈圧, 心拍出量などを, またスケールベッドにて体重変化を測定した。結果, 体重変化を除く各パラメータは輸液速度, カテコラミンや利尿剤量が症例ごとに異なり, 一定の傾向は認められなかった。体重変化は術直後を基準とすると6hで最大値1.07±1.35kg (1.9%増) と増加し, その後徐々に減少。48hで一3.29±2.99kg (4.4%減) に至った。その体重変化の標準曲線をもとに腎不全患者4例に対し, 術直後から持続的に透析療法を行った。2例は持続的血液濾過, 1例に持続的血液濾過透析, 1例に持続的自動腹膜透析を施行した。除水は非透析患者の体重変化に沿って, 12時間後から徐々に開始した。その結果, 周術期における血圧, 循環動態の安定した管理が安全かつ容易に施行でき, 以上のような計画除水は無尿, 腎不全患者において有用な方法と考えられた。
  • 福田 誠, 日吉 辰夫, 酒井 清孝, 小久保 謙一
    2000 年 29 巻 2 号 p. 411-418
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    新たに開発されたBIOREX®《AM-BC-X》膜は, 膜最外層の孔径が小さい対称グラディエント孔構造を有するために, 膜外部から体内へのエンドトキシン等汚染物質の逆流入を抑制しつつ, 体内不要物の高除去能を発現できる。今回, 孔構造の異なる4種類の膜 ((1) 均質膜, (2) グラディエント構造膜, (3) 逆グラディエント構造膜, (4) 対称グラディエント構造膜) を試作し, 各々の透析器内で起こる物質透過現象を定量的に把握した上で孔構造と物質透過の異方性との関係について検討し, 《AM-BC-X》膜の上記特性を検証した。その結果, 中空糸両側が緻密であり, かつ内側よりも外側の方が緻密である《AM-BC-X》膜では, 外側から内側よりも, 内側から外側に物質が移動しやすかった。このような孔構造の非対称膜は, 血液からは病因物質を除去しやすく, 透析液から血液中へのエンドトキシン等汚染物質の逆侵入は起こりにくい, 理想的な孔構造の透析膜であると考えられた。
  • 透析前・後の患者の血液のヒドロキシラジカルの消去活性
    高島 征助, 林 伸幸, 中路 修平, 内藤 秀宗, 宮崎 哲夫, 藤森 明, 吾妻 眞幸
    2000 年 29 巻 2 号 p. 419-425
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    膜素材の異なる4種類の中空糸膜型透析器による各3名の患者の透析前・中の血清のヒドロキシラジカルの消去活性をFe2+イオン-Fe3+イオンへの色調変化を伴うフェントン反応の423nmの吸光度の変化をパラメーターとして検討した。透析前の血清よりも, 透析中の血清の方が, 僅かではあるが, ヒドロキシラジカルの消去活性が向上する傾向が認められた。さらに, それらの血清のジフェニルピクリルヒドラジル (DPPH) /メタノール溶液の槌色現象 (反応率) と対比して考察した。血清のフェントン反応速度とDPPH反応率の間には正の直線関係が成立している。
  • 酒井 康行, 古川 克子, 成瀬 勝俊, 牛田 多加志, 針原 康, 幕内 雅敏, 立石 哲也, 鈴木 基之
    2000 年 29 巻 2 号 p. 426-432
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    人工肝血漿灌流時の増殖因子.ホルモン低濃度環境における細胞機能の向上を目的として, 上皮成長因子, インスリン, デキサメサゾンを包括する乳酸グリコール酸共重合体/ゼラチンマイクロカプセルを調製し, それを含むブタ肝細胞凝集体を浮遊培養で形成, その機能をin vitroで評価した。ファイブロネクチンによるカプセル被覆により, 凝集体へのカプセル取り込みが向上した。外部から増殖因子.ホルモンの供給がない条件下で, 上記の増殖因子.ホルモン包括カプセルを含む凝集体は, アルブミンを包括したコントロールカプセルを含む凝集体と比較して, 1週間目までの細胞当たりの機能は約2倍に向上した。それ以降4週間目までは, 主として細胞数の減少が著しく抑制されることにより, 大幅な機能向上が見られた。以上の結果は, 本手法を利用することで, 人工肝システムの固定化細胞数当たりの性能を高めうることを示している。
  • 星野 正巳, 原口 義座, 酒井 基広, 林 和城, 三枝 弘志, 大澤 寛行
    2000 年 29 巻 2 号 p. 433-439
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    敗血症14例を対象に人工膵STG-22 (延べ施行日数253日) の血糖値精度低下の推移と要因, 対策を検討した。【方法】精度指標は測定値の真値に対する割合の累積Xを用い, 採血チューブ・電極の電顕像も検討した。【結果】1) Xの最高・最低・終了時の平均は各々113.6±15.4, 54.1±24.8, 65.7±31.7%であった。2) Xの1日15%以上の増加は10.3%に, 採血ルートフラッシング時の急上昇が7.1%に見られた。3) Xの1日15%以上の急性低下は13.8% (17回) に生じ, 41% (7回) は測定不能となり採血ルート交換や運転の中止を要した。電顕で白血球等の付着を認めた。2例 (回) は採血ルート交換後も改善しなかった。【考察】Xの増加は採血ルートの血液成分付着除去, ポンプチューブへたり等で生じ, 値補正とブラッシングで対処可能と思われた。Xの低下は採血ルートの血液成分付着やカテーテル先端の血管壁近接等による採血不良が原因と思われた。急性低下時は採血ルート交換, カテーテル位置変更をすべきと考えられた。
  • 吉見 靖男, 酒井 清孝
    2000 年 29 巻 2 号 p. 441-445
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    分子インプリントは, 抗体のような基質特異性を持たされた合成高分子であり, センシング用または分離用デバイスとして有望である。我々は, インジウムースズ酸化物 (ITO) の表面に, テオフィリンに対する分子インプリントの薄膜を形成した。そして, この処理を施したITOを用いて試験液中のテオフィリンの存在下または非存在下でフェロシアン化物のサイクリックボルタメトリーを行った。その結果, 分子インプリントの存在によってフェロシアン化物の酸化電流は著しく増大した。この結果は, 鋳型分子の存在によって分子インプリント薄膜は拡散溶質透過速度を増大させることを示唆している。一方, 鋳型物質の存在によって分子インプリント薄膜の表面開孔率が増大することが, 原子問力顕微鏡で確認された。これらの結果より, 分子インプリント薄膜は鋳型物質の共存によって, その構造および溶質透過性を変化させることが示唆された。
  • 感温性ヒアルロン酸の合成と構造化
    大屋 章二, 中山 泰秀, 松田 武久
    2000 年 29 巻 2 号 p. 446-451
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    イニファタ・リビングラジカル重合法を用いたN-イソプロピルアクリルアミド (NIPAM) のグラフト重合により感温性ヒアルロン酸を合成した。グラフト鎖導入量はピアル'ロン酸1ユニットあたり0.4, 3.1, 7.5%に制御し, 鎖長は約5千, 1.1万, 4.6万, 8.4万に制御した。PNIPAM化ヒアルロン酸の曇り点はPNIPAMの鎖長, 導入率に関わらず約34℃であった。PNIPAM鎖の長鎖長化, および高導入率化により平衡光透過率は低下した。PNIPAM化ヒアルロン酸は, その膜上で血管内皮細胞の接着が大幅に抑制されたことより, 細胞非接着マトリックスであった。加温により生成したPNIPAM化ヒアルロン酸ゲルの構造を走査型電子顕微鏡で観察すると, 未処理のヒアルロン酸ゲルに比べ, 少しランダムな繊維状であった。
  • 岸田 晶夫, 田口 哲志, 明石 満
    2000 年 29 巻 2 号 p. 452-456
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    アパタイトは優れた軟組織接着性を有し, 保存安定性が高く, 滅菌も容易である。本研究では, 植え込み型人工臓器の体内埋入時の周辺組織との界面に生体接着性を付与することを目的としてハイドロキシアパタイト (HAp: Ca10 (PO4) 6 (OH) 2) の複合化を, HApの新しいin situ合成法である交互浸漬法を用いて行った。すべての材料表面上に短時間でHAp層形成が見られたが, 形成量は材料に依存した。特に無機材料表面上に大量のHApが形成した。形成されたHApの結晶性は高くなく, 骨組織と類似していた。有機高分子材料上での形成量は少なかったが, これに表面処理を行うと, HAp形成量及び付着強度も増加した。無機材料では表面処理の効果はなかった。交互浸漬法により, 簡便な手法で種々の人工臓器用材料上にHApを形成できることが明らかになった。
  • 宮脇 富士夫, 貝原 眞, 辻 隆之, 福井 康裕
    2000 年 29 巻 2 号 p. 457-462
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    マグネタイトの抗血栓性評価を行った。1) セグメント化ポリウレタン (SPU) チューブ (N=8) をそれぞれ二分し, 一方の内腔のみをマグネタイトで被覆した。2) 14個の円筒形ガラスのうち7個をマグネタイト被覆した。3) 減衰振動型レオメータにて標的チューブ内の全血凝固時間を測定した (20分以上の場合, 抗血栓性素材と見なせる) 。【結果】1) マグネタイト被覆によって, SPUチューブの場合, 凝固時間は1.6倍延長した (39.9±13.1分vs.26.9±8.9分;ρ=0.036, Wilcoxon signed rank test) 。ガラスチューブの場合は, 凝固時間は10倍に延長した (N=7;28.5±6.9分vs.2.7±0.2分;ρ=0.018) 。【結論】マグネタイト被覆によって, 良好な抗血栓性を有するSPUの抗血栓性をさらに高めることができ, また, 凝固促進素材であるガラスをも良好な抗血栓性材料に変えることができた。よって, マグネタイトそのものに優れた抗血栓性があることが示唆された。
  • 陳 国平, 牛田 多加志, 立石 哲也
    2000 年 29 巻 2 号 p. 463-467
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2011/06/02
    ジャーナル フリー
    グリコール酸と乳酸の共重合体 (PLGA) の多孔質体のボアの中にコラーゲンのマイクロスポンジを導入することにより, PLGA上コラーゲン複合スポンジ材料を作製した。SEM観察から, PLGAスポンジのポアの中にコラーゲンスポンジが形成されていることが確認された。EPMA分析により, コラーゲンスポンジの領域では窒素が検出され, PLGAの領域では窒素が検出されなかったことからもこのPLGA一コラーゲン複合スポンジ構造が確認された。複合スポンジを調製する際, コラーゲン溶液の有効な濃度範囲が0.1~1.5(w/v) %であることがわった。コラーゲンとの複合化により, PLGAスポンジの水濡れ性は改善され, 細胞の播種が容易になった。さらに, 複合スポンジは高い機械強度を示した。このPLGA上コラーゲン複合スポンジにウシ膝の軟骨から採った軟骨細胞を播種し, 培養したところ, 軟骨細胞はこの複合スポンジのコラーゲンスポンジに均一によく接着し, コラーゲンII等の細胞外マトリックスを分泌しながら生育していることが確認された。
  • 平井 文康, 荻野 英司, 古吉 重雄, 谷 敍孝
    2000 年 29 巻 2 号 p. 468-472
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    我々は血液中のエンドトキシン活性を低下させ, しかも同時にサイトカインを吸着する吸着体の探索を行った。スクリーニングの結果, ハイポーラス型強酸性陽イオン交換樹脂であるRCP160 (三菱化学 (株) 製) を用いることによりTNF-α吸着が可能であった。このRCP160を用い, 他のサイトカイン吸着能及びエンドトキシン活性 (リムルス活性/サイトカイン産生能) 変化について評価した。その結果, RCP160はIL8についても大きな吸着能を示し, またIL-1β, IL-6の吸着も可能であった。リムルス活性はRCP160によって大きく低下し, またエンドトキシン添加血液のサイトカイン産生についてはTNF-α, IL-1β, IL-6で大きく低下することがわかった。RCP160はグラム陰性菌由来敗血症にとどまらず高サイトカイン血症を呈する疾患用の吸着体として有望であると思われる。
  • 米川 元樹, 久木田 和丘, 目黒 順一, 玉置 透, 川村 明夫, 坂下 栄治
    2000 年 29 巻 2 号 p. 473-477
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    Cryofltrationを施行した11例でEDA (+) フィプロネクチンの2nd space引き抜き量を算定し, Cryofltration施行前血中濃度や除去量との関係を検討し, 以下の結論を得た。 (1) 個々の症例ではCryofltration前血中濃度と2nd space引き抜き量は, 多発性骨髄腫を除きほぼ平行関係にあった。 (2) 慢性関節リウマチと多発性骨髄腫ではCryofltration前血中濃度や1st spaceからの除去量は変わらないが, 慢性関節リウマチは2nd space引き抜き量が有意に多く, 総除去量も多かった。 (3) Cryofltration前血中濃度と2nd space 引き抜き量とは慢性関節リウマチでは相関したが, 多発性骨髄腫では相関は見られなかった。 (4) 総除去量に対する2nd space引き抜き量の比率は大部分70%以上あり, Cryofltration前血中濃度との間で負の相関にあった。
  • 久木田 和丘, 内田 泰至, 増子 佳弘, 堀江 卓, 田中 三津子, 玉置 透, 目黒 順一, 米川 元樹, 川村 明夫
    2000 年 29 巻 2 号 p. 478-482
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    血液浄化用ブラッドアクセスとしてのダブルルーメンカテーテル (DLC) の改良と問題点を自験例を中心に概説した.現在の主な問題点は感染とカテーテル内血栓, “へばりつき現象”, 静脈内血栓による血流不足であるそれぞれの問題に対して多くのDLCが考案, 市販されてきたが, 今のところ総合的な解決には至っていない.今後, 個々の問題点の解決のみならず, 総合的に欠点を克服した “オールマイティカテーテル” の出現が望まれる.
  • 大迫茂 登彦, 佐藤 正, 中尾 佳永, 山村 匡, 藤原 弘佳, 服部 玲治, 藤井 弘史, 二宮 英樹, 大谷 肇, 今村 洋二
    2000 年 29 巻 2 号 p. 483-487
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    一過性心房細動に対する高心拍ペーシングと心室性期外収縮 (PVC) に引き続き発生する逆行性室房伝導に対するPVC同期心房ペーシングが有効であった洞機能不全症候群 (SSS) の一例を経験した.症例は75歳, 男性.最大7.2秒の洞停止によるsyncopeとPVCを伴ったSSS (Rubenstein III型) と診断され, 平成10年12月恒久的ペースメーカー (PM) 植込み術を行い, PM最低心拍数設定を80ppmとした.また術後104日目の計測時に確認しえたPVCに伴う室房逆伝導Pに対し, PVC同期心房ペーシングによる速やかな逆行性室房伝導の消失が得られた.術後223日目の計測において病的心房拍動感知率0%, PVC感知率4%であった.高心拍ペーシングとPVC同期心房ペーシングは, PM植込み後に発生する不整脈予防として有用であることが示唆された.
  • 岩崎 清隆, 梅津 光生, 井街 宏, 藤本 哲男
    2000 年 29 巻 2 号 p. 489-495
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    高分子製人工弁の加速耐久試験法はISOでもまだ確立されていない.そこでまず, Jellyfish弁の慢性動物実験で確認された弁葉破断部位を加速試験で再現できるような試験方法を検討することで, 信頼性のある加速耐久試験方法の確立を目指した.力学的な背景から, 弁閉鎖時の最大荷重および水温に着目して実験を行った.弁閉鎖時の最大荷重が標準的な拍動時の1/2の条件では, 作動流体の温度を40°Cから60°Cに上げても慢性動物実験で確認された弁葉破断部位を再現できなかった.しかし, 弁閉鎖時の最大荷重が標準的な拍動時の1/4の条件では, 水温を60°Cと高温に設定することではじめて慢性動物実験で確認された弁葉破断部位を再現することに成功した.したがって, 高分子製人工弁の加速耐久試験では, 弁閉鎖時の最大荷重および水温は最重要設定項目であることが判明し, さらに, 弁閉鎖時の最大荷重を下げ, 水温を上げることが重要であることがわかった.
  • 冨澤 康子, 西田 博, 遠藤 真弘, 小柳 仁
    2000 年 29 巻 2 号 p. 496-499
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2011/06/02
    ジャーナル フリー
    代用心膜およびパッチ材などの医用材料を用いて左室瘤の外科治療を行った患者の追跡調査を行った.【方法】患者86例のうち, 退院したのは76例で, 生死が確認されていない37例に対し, アンケート用紙を送付した.なお, 当院では左室瘤の外科治療後の予後調査は初めてである.【結果】1ヵ月以内に返事が得られたのは20例で, 生存17例, 患者死亡との返答3例.宛先不明での返送13通, 回答なし3通.16例のうち, 3例は紹介先の病院, 2例は過去の勤め先, 3例は市役所へ問い合わせて死亡が判明した.さらに法務局へ申請し調査したが, 本籍が不明の症例は追跡できず, 最終的に手術した患者の生存あるいは死亡が83例 (95.3%) 確認された.【結語】日本がますます多様化, 複雑化する医療用具の消費大国であることを考えると, 埋植医療用具の追跡調査のためには全国民が有し, 常に住所などの情報が更新される健康保険システムの利用, および自治省, 法務省, 厚生省の省庁間の協調によるデータベース作成などが望ましいことが示唆された.
  • 野島 武久, 織田 禎二, 小野 宏志, 芦田 敦生
    2000 年 29 巻 2 号 p. 501-506
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル フリー
    ペースメーカー感染は難治性感染へ移行しやすく感染装置の全摘出が原則となるが, 電極抜去が比較的困難であることから先行治療として姑息的加療が選択されることがあり, 根治的治療にさいしての障害となる.最近当科で経験したペースメーカー感染の2症例に対して計3本の心内膜電極を非開胸下に抜去し, 本疾患での問題点を検討した.症例1は植え込みから157カ月の長期留置電極で, Lead Removal Kitを用いたが, 先行治療として電極の短切が行われていたことから電極抜去に難渋した.症例2は植え込み後3カ月で, 感染直後から電極抜去を前提とした術前管理を行い, 直接牽引にて電極を抜去した.ペースメーカー感染における電極抜去では, 術前の電極状態を良好に温存することが電極抜去を低侵襲で行うために重要であり, ペースメーカー感染が明らかとなった時点から, 電極抜去を目標とした術前患者管理を行うべきであると思われナフ.
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