2024 年 5 巻 p. 1-10
本稿では、19 世紀半ばから20 世紀初頭における欧米の挿絵本で頻繁に描かれた花の擬人化に着目し、デザイン的観点から花の擬人化表現を分析した。
挿絵本25 冊(合計513 枚)を研究対象として分析した結果、以下の5 つの花の擬人化表現タイプを見出した。
タイプA 完全な人間の姿
タイプB 頭部は花、身体は人間
タイプC 頭部・上半身は人間、下半身は植物タイプD 完全な植物の姿、人間の表情・動作
タイプE その他
また、最も多く見られた表現タイプA について頭部、衣服、足元、付属品の4点のデザインに注目して分析し、花の擬人化表現では特に頭部のデザインに印象的な花の要素を加えること、花の存在感・立体感を強調する衣服であること、また足元や付属品等で花の要素を多彩に盛り込む特徴があることを指摘した。