2024 年 5 巻 p. 11-20
本研究は、認知症ケアの拠点である全国の介護老人保健施設(以下、老健)および認知症対応型共同生活介護施設(グループホーム;以下、GH)などの介護サービス施設における屋外施設環境計画指針の作成のための基本データとして、認知症の予防と症状の抑制に推奨され、かつ、私たちの身近な運動の一つである散歩に注目し、全国の老健とGHを対象に散歩に関するアンケート調査を行い、散歩の実施状況および環境と散歩が各施設に入所している認知症者(以下、入所者)に与える影響を把握することを目的とする。加えて、入所者に良い影響を与える散歩の条件を明らかにすることを目的とした。
アンケート調査は全国1,019の老健と970施設のGHを対象に実施・集計・分析した。その結果、老健で90施設のうち51施設、56.7%、GHで171施設のうち155施設、90.6%の割合で散歩が実施されていることがわかった。施設の役割やサービス内容が異なる老健とGHにおいて、散歩は認知症の症状の抑制や入所者の気分転換や運動不足解消を目的に高い割合で実施されていることがわかった。加えて、両施設における散歩を実施している天気や季節、実施場所、頻度、距離、時間を把握することができた。その中で、入所者に良い影響を与えるためには、自然が感じられる整備された施設環境が重要である事がわかった。さらに、散歩を実施するための課題として、GHにおいては散歩を実施する適切な施設が少ない事、両施設に共通して介護スタッフの人員不足と介護スタッフへの負担の軽減が重要であることがわかった。本研究成果は今後の介護サービス施設における散歩の実施方法の検討や屋外施設環境計画指針の作成の基礎データとなる。