日本細菌学雑誌
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平成19年黒屋奨学賞受賞論文
腸管出血性大腸菌O157:H7の人腸管上皮細胞への付着に関する研究
立野 一郎
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2007 年 62 巻 2 号 p. 247-253

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抄録

腸管上皮細胞への付着は, O157:H7による感染の初期段階において必須である。本研究では付着に関与する細菌側因子の同定を試み, その結果O157:H7による大腸上皮への付着機構について以下のようなことを明らかにした。(1) O157:H7による上皮細胞への付着は遺伝学的に少なくとも2つの段階に分けることが出来る。O157:H7は付着因子であるIII型分泌機構依存的に上皮細胞へ付着したのち, intimin依存的にその場所で増殖しクラスターを形成する。(2) 第一段階の付着に関して, 菌体側から宿主細胞に差し込まれる (EspA, EspB, EspDの3種類のタンパク質からなる) 管が付着因子としても機能している可能性が顕微鏡像を基に指摘されていた。この仮説が, 実際espA, espB espD 遺伝子の変異株を解析することにより遺伝学的に証明された。(3) 第一段階の付着の効率のみを上昇させるような何らかの未知の因子が存在することが示唆された。(4) 93kDaプラスミド (pO157) 上のtoxB 遺伝子がEspA, EspB, EspDの産生及び分泌能に影響を与えることにより第一段階の付着に関与している可能性がある。(5) yhiF, yhiE 遺伝子は, LEEの発現を介さずに第一段階の付着を制御していることが示唆された。

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© 2007 日本細菌学会
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