日本細菌学雑誌
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総説
抗菌薬の新規標的としての細菌のアクチン様細胞骨格タンパク質
和地 正明岩井 伯隆
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2007 年 62 巻 4 号 p. 397-404

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抄録

細菌感染症の化学療法において薬剤耐性菌の出現が大きな問題となっている。この問題に対抗する手段の一つは, 新規作用標的を有する薬剤の開発であろう。我々は, 細菌の染色体分配を阻害する薬剤のスクリーニングを行い, 大腸菌細胞を球菌化し高頻度に無核細胞を放出させる化合物A22 (S-(3,4-dichlorobenzyl) isothiourea) を見いだした。遺伝学的な解析から, A22の作用標的は細菌のアクチン様細胞骨格タンパク質MreBであることが示された。さらにA22を用いた解析から, MreBタンパク質は細菌染色体の娘細胞への分配に機能していることが明らかとなった。これらのことは, これまで有糸分裂装置を持たないと考えられてきた細菌にもアクチン様細胞骨格を用いた有糸分裂装置が存在することを強く示唆するものである。本稿では, 細菌のアクチン様細胞骨格を標的とした薬剤の可能性について議論したい。

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© 2007 日本細菌学会
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