日本細菌学雑誌
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総説
ビブリオの多様性と進化
澤辺 智雄
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2010 年 65 巻 3 号 p. 333-342

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抄録

ビブリオは,コレラ菌,腸炎ビブリオ及びビブリオ・バルニフィカスというヒト病原性種を含むことから,病原微生物学から環境微生物学までにおける幅広い学術分野でモデル微生物として活発に研究されている細菌群である。コレラ菌の発見から156年を経過した今でも,新種のビブリオが発見され続けており,自然界におけるビブリオの種多様性は驚くほど高い。1965年にM. Véonによって作られたビブリオ科(Vibrionaceae)は,6属,103種が包含される巨大な分類群となっている。ビブリオで新種が記載され続ける背景には,株の遺伝的多様性を精密に検出する指紋鑑定法や個体識別法が取り入れられたことにある。また,個体識別の過程で得られる多座位の遺伝子配列を解析することにより,ビブリオの進化の系譜や種分化機構の推定も試みられるようになってきた。さらに,ビブリオをモデルとしたゲノム情報に基づく分類規範の構築も始まっている。本稿ではビブリオの分類の歴史を紐解きながら,ビブリオの多様性と進化に関する最新の成果をまとめて紹介する。

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© 2010 日本細菌学会
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