日本細菌学雑誌
Online ISSN : 1882-4110
Print ISSN : 0021-4930
ISSN-L : 0021-4930
平成27年黒屋奨学賞受賞論文
マイコプラズマの病原因子の解析
清水 隆
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 70 巻 4 号 p. 369-374

詳細
抄録
マイコプラズマは細胞壁を持たない小さな細菌で, ヒトに様々な疾患を引き起こす。なかでも近年大流行がみられたMycoplasma pneumoniaeはヒトに肺炎を引き起こす。これらのマイコプラズマによる疾患はマイコプラズマが引き起こす過度の免疫反応が病態に関与していると考えられるが, その誘導機序には不明な点が多い。我々はさまざまな病原性マイコプラズマから炎症を誘導する因子を分離・同定し, それがリポプロテインであること, Toll-like receptor(TLR)2を介して炎症を誘導すること, を明らかとした。また, これまでにはマイコプラズマには存在しないと考えられていた構造をもつリポプロテインの存在が明らかとなった。さらに我々はM. pneumoniaeのもつユニークな接着・運動機構が炎症誘導に密接に関与していることを明らかとした。M. pneumoniaeの接着・運動はリポプロテインのレセプターであるTLR 2非依存的に炎症誘導を増強し, 細胞内レセプターであるインフラマソームやTLR4, オートファジーなどを介して炎症を誘導することが明らかとなった。
著者関連情報
© 2015 日本細菌学会
前の記事 次の記事
feedback
Top