2016 年 71 巻 4 号 p. 199-208
病原菌がどのように感染症を引き起こすのか理解することは, 予防法の確立や治療法の開発に欠くことができない。しかし推し進めてみれば, それは宿主と病原菌の非常に複雑な相互作用からなることに気づかされる。我々の研究対象である食中毒原因菌, 腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)もまた, 汚染した魚介類から経口的に人に感染した結果として, 炎症性の下痢を引き起こすことが知られている。大阪で発見されてから約70年, これまでいくつもの病原因子が特定されたが, ここ数年, 我々は腸炎ビブリオの持つ3型分泌装置のひとつ(T3SS2)が本菌の下痢原性に非常に重要であることを明らかにしてきた。さらに近年, 2つのT3SS2エフェクター(VopOおよびVopV)を我々は新たに発見し, それらが宿主細胞に異常なアクチン骨格の再構成を誘導することを明らかにした。本稿では, それら新規エフェクターの生物活性および, 動物モデルを用いた下痢誘導活性への意義について得られた知見を述べたい。