2016 年 71 巻 4 号 p. 209-215
大腸菌はO血清群を指標として細分類され, 特に病原性大腸菌の調査や研究においては, 分離株の優先すべき特徴としてO血清群の判定が行われる。O血清群の多様性はO抗原合成遺伝子群の多様性と関連しており, それぞれのO抗原合成遺伝子群に特徴的な塩基配列はO血清群の判定に利用できる。我々はこれまでに定められているO1からO187までのすべてのO血清群におけるO抗原合成遺伝子群の配列を決定し, 保存性と特異性の両面における特徴を明らかにした。さらにその解析結果を基に, O血清群を網羅的に判定できる2つの遺伝学的な手法を開発した。一つはPCRを基礎とするマルチプレックスPCR法(E. coli O-genotyping PCR)で, もう一つはwzx/wzyとwzm/wztの配列セットを用いたBLAST検索による方法(SerotypeFinder)である。いずれの方法で得られる結果も表現型に準じており, 今後, 大腸菌における調査や研究において幅広い利用が期待される。