日本細菌学雑誌
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平成30年黒屋奨学賞受賞論文
A群レンサ球菌に対するオートファジー制御機構解析
野澤 孝志
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2018 年 73 巻 3 号 p. 193-199

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抄録

A群レンサ球菌(Group A Streptococcus, Streptococcus pyogenes)はヒトに咽頭炎や扁桃炎, 劇症型レンサ球菌感染症を引き起こす病原性細菌である。上皮細胞内へ侵入したA群レンサ球菌は細胞質内へ到達するが, 細胞質内の細菌はオートファジー経路を経て殺菌される。この殺菌的オートファジーは細胞内免疫機構の一つとして機能する一方, これから回避する細菌も存在する。また, オートファジーによる細菌認識機構やオートファゴソームの膜動態は, 感染細菌種に応じて様々であり, 宿主側も感染に適応したオートファジー経路を備えていると考えられる。本研究では, A群レンサ球菌感染により誘導されたオートファジーを制御するRab GTPaseネットワークを明らかにした。また, Rab GTPaseを介した細胞内膜輸送経路が, 細菌を取り囲む巨大なオートファゴソーム形成とオートファジーによる殺菌に重要であることを見出した。本稿では, 得られた知見を基にA群レンサ球菌感染に適応したオートファジーの制御機構について述べたい。

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