日本細菌学雑誌
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2019年黒屋奨学賞受賞論文
腸内細菌による宿主免疫システム(Th17とILC3)を介した病原性細菌,真菌感染防御
後藤 義幸
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2020 年 75 巻 2 号 p. 185-194

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抄録

ヒトの腸管には無数の細菌が常在している。腸内細菌の重要な機能の一つとして,病原性微生物の腸管定着を阻害する“colonization resistance”効果が挙げられる。しかし,腸内細菌による“colonization resistance”効果の詳細な機構は不明な点が多い。筆者は,病原性大腸菌であるCitrobacter rodentiumの感染防御に寄与する腸管Tヘルパー17(Th17)細胞の誘導に樹状細胞の抗原提示が必要であることや,腸管Th17細胞が腸内細菌の一種であるセグメント細菌由来抗原を認識することを見出した。また,セグメント細菌が3型自然リンパ球を介して腸管上皮細胞が発現する糖鎖のα1,2-フコースを誘導し,病原性細菌であるSalmonella typhimuriumの感染を防御することを明らかにした。さらに,腸内細菌は病原性細菌だけでなく病原性真菌であるCandida albicansの腸管定着を阻害することも見出した。以上の研究から,腸内細菌による病原性微生物に対する“colonization resistance”効果機構の一端が明らかとなった。

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