抗體ノ體内ニ於ケル消長
其2 異種免疫血清ニヨル受働免疫時ノ各抗體ノ消長
1941 年 35 巻 11 号 p. 1029-1044
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1941 年 35 巻 11 号 p. 1029-1044
同種免疫血清ニヨル受働免疫ニ次ギテ, 異種免疫血清ヲ以テスル受働免疫時ノ凝集素, 溶血素, 沈降素ノ清長ヲ犬, 家兎, 山羊等ヲ使用觀察セリ.
異種免疫血清ヲ以テスル受働免疫賦與期間短キ理由ノ1トシテPfeiffer u. Friedbergerハ抗免疫體ノ存在ニ歸セルモ, 之ニ對シテハ否定説有力ニシテ教室先輩遠藤氏モ亦之ヲ否定セリ.
上記山羊血清對家兎及ビ家兎血清對犬ノ異種免疫血清受働免疫成績ヲ檢討スルニ、抗ちふす菌山羊凝集素家兎注入ニヨル免疫經過ハ皮下例ニ於テ免疫後24時間ニシテ160倍ノ價ヲ示シ, 2-4日間ニ犬體最高價ニ達セリ.静脈例ニ於テハ注入直後ニ最高價, 腹腔例ニテハ注入後30分ニシテ血中ニ出現5-24時間ニ最高價ヲ示シ後徐々ニ下降セル事ソノ最高價血中出現期, 出現量, 吸收速度等同種免疫血清ノ前實驗ニ對照シテ著差ヲ認ムルヲ得ザルモ, 免疫體體内存續期間ハ明ニ同種ノソレニ比シ短期間ナル事ハ認メ得ル所ニシテ, 免疫體排出下降状態ヲ仔細ニ觀察スルニ或ル一定値マデノ下降ハ大約24-48時間毎ノ等比級數的ナル事, 同種免疫血清ノ實驗例ニ相似タリ.一定値以後ノ下降ハ同種ノソレハ極メテ徐々ナルモ異種ノソレハ速ニシテ存?續期間ノ差異ハ此處ニ萌セリ.
家兎免疫血清ヲ犬ニ注入セル溶血素免疫經過ヲ見ルニ特異ナルハソノ體内存續期間ニシテ, 各注入部位共約3週間近ク迄證明セラレ, 山羊血清ヲ家兎ニ注入セル凝集素受働免疫トハ全クソノ趣ヲ異ニセリ.即チ同種免疫血清ヲ以テスル受働免疫賦與期間トハ大差ナキ状態ニテ, 異種免疫血清ニヨル受働免疫賦與期間ハ常ニ短シトハ斷定スルヲ得ザルモノニシテ, 使用免疫血清及ビ受働免疫動物ノ種類ニヨリ左右セラルルモノナル事ヲ知ル.
沈降素ニ就テ見ルニうーれんふーと氏法ノ沈降素定量法トシテ疑義ヲ有シ, 爲ニ同法ニヨル沈降素受働免疫經過ハ常ニ凝集素, 溶血素ノソレニ比シ不規則ナル免疫經過ヲ示セル事ハスデニ先ニ述ベシ所ナルモ, 本異種免疫血清ニヨル受働免疫ニ際シテモ亦同様結果ヲモタラセリ.所謂沈降素量ナルモノハ免疫ニ際シテノ抗元注射回數ニ關係ヲ有シ, 注射回數少キ沈降素血清ハ沈降素量少クシテ受働免疫ニ使用シテ血清ノ一定稀釋ヲ受ケルヤ反應スデニ陰性トナリ, 沈降素受働免疫ノ一不可解點ヲナセルモ, 所謂沈降素量ト沈降素價ノ關係唱導セラレテ以來, 分明セル所少カラズ.
各實驗例ニ就テ觀察スルニ皮下例ニ於テハ, 注入後48時間ニシテ各々320倍ノ價ヲ示シ, 大體同價ヲ持續シテ經過シ次ニ160倍ニテ下降シ, 彼急速ニ消失セリ.静脈例, 腹腔例ニ就テ見ルモ反應出現時期コソ異レソノ急速ニ出現スル事, 一定値ヲ持續經過後急速ニ消失スル點等, 同種免疫血清ヲ以テスル實驗例ニ何等異ナラズ.即チ異種免疫血清ニ於テモ亦うーれんふーと氏法ニヨル沈降素受働免疫ハ, 沈降素血清ノ一定ノ反應領域ヲ示スモノニシテ, 體内ニ輸入サレタル免疫體排出ニヨル漸減的經過ヲ示スモノニ非ザル事ヲ知レリ.
