日本細菌学雑誌
Online ISSN : 1882-4110
Print ISSN : 0021-4930
ISSN-L : 0021-4930
抗原抗体反応に関する研究
第3報抗原抗体反應による妊娠反應の可能性について
河合 広
著者情報
ジャーナル フリー

1956 年 11 巻 8 号 p. 661-666

詳細
抄録

妊娠反応として性腺刺戟ホルモン即ちGonadotrophinの有無を議叉は家兎を用いて検査する生物学的方法は従来実用化されているが, 之をin vitroで行うとしたのが本実験の目的である。
原理としては, 性腺刺戟ホルモンで免疫された家兎血清と, 妊娠したと思われる婦人の尿中に予想されるGonadotrophinとの沈降反応を重層法で調べるのである。
免疫抗原としては牛叉は馬の脳下垂体前葉と中絶妊婦の胎盤から精製した帝国臓器製Synaphorihを使用した。但し之だけでは家兎を免疫することが困難であるので, Cristalline egg albumin溶液と混合して一部結合させて免疫した。この抗血清はSynaphorin溶液とよく反応するので, 当然妊婦尿中に存在するGonadotrophinとも反応すると考えたのである。
然るに実施の結果否定的であった。確実に妊娠しているいろいろの月の婦人の尿について行ったテストは陰性であり, 陽性に出た場合は不妊の人のも, 叉更に無機塩溶液に対しても陽性に出たことがあって, 実用にならない。
陽性に出ない理由としては, 尿中のGonadotrophinが小量すぎて本テストにかつらないか, 抗原の特異性が違うかであろうと考えたが, Heidelberger氏の意見では恐らく尿中にある他の類似ハプテンによるcross reactionで阻止されるのではなかろうか, ということである。
此の反応を成功させるは抗原として更に純粋な製品即ち妊婦尿から精製したAntuitrin S等で追試してみる必要があろう。
此の方法は現在の所妊娠反応としては実用性をもたないが, 免疫原性のない他のホルモン叉はステロイド系物質の微少量の検出叉は定量には応用出来るかも知れない。

著者関連情報
© 日本細菌学会
次の記事
feedback
Top