抄録
人型有毒結核菌H37Rvの結合脂質から,毒性糖脂質を分離精製して,その生物学的および化学的性状を検討した。この物質は,マウスに対して遅延性の致死毒作用を示すが,従来結核菌の産生する毒性糖脂質として,その化学構造の確認されているcord factor(trehalose-6,6'-dimycolate)とは異なつた化学性状を示した。この毒性糖脂質は,糖成分としてはトレハロース,脂質成分としてはミコール酸から構成されていると考えられる。ミコール酸とトレハロースの分子比は,ほぼ1:1である。以上の結果から,この毒性糖脂質はtrehalose monomycolateであると推定される。