マウスに黄色ブドウ球菌の生菌をFreundの不完全アジュバントとともに皮下注射したのち,週別に同菌のα-毒素を腹腔内に攻撃し,α-毒素の致死作用におよぼす影響を調べ,またこのα-毒素の腹腔内攻撃前18∼24時間に同菌のα-トキソイドあるいはホルマリン死菌ワクチンで前処置し,これらの前処置によるα-毒素の致死作用におよぼす効果について調べたところ,次のような結果を得た。
1. 生菌処置1週後では,対照マウスにおけるα-毒素のLD
50(1.918mgN/kg)に比べて,α-毒素のLD
50(1.289mgN/kg)にゆるやかな低下が認められ,α-毒素に対する感受性が上昇しているようにみうけられた。
2. 生菌処置2週後および3週後になると,α-毒素のLD
50(それぞれ3.923mgN/kg,7.782mgN/kg)は対照マウスにおけるよりは上昇し,血中抗体価の上昇と相まつて,α-毒素の致死作用に対する感受性が低下した。
3. 生菌感作処置1週後のマウスにおけるこのようなα-毒素の致死作用に対するゆるやかな感受性の亢進は,特に同菌のα-トキソイドで前処置しておくことによつて消失した。
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