日本細菌学雑誌
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Yersinia enterocoliticaの生物学的性状と病原性に関する研究
II. Y. enterocoliticaのサルへの実験的感染とその病理学的所見
丸山 務
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1973 年 28 巻 5 号 p. 413-421

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抄録

Yersinia enterocoliticaの病原性と感染病像を明らかにする目的で,本菌をサルに経口的に投与した結果,血中抗体価の上昇,長期間の持続的排菌,腸間膜リンパ節からの菌の検出および一部にみられた粘血性下痢などの所見から,実験的感染に成功した。
感染サルは敗血症などによるへい死例はなかったが,剖検時の肉眼的所見では明瞭な腸間膜リンパ節の腫大がみられた。腸管の所見としては軽度のカタル性変化のみで特異病変は観察されなかった。しかし,排菌期間中にと殺されたサルの腸管内容物ではいずれの部位からも投与菌が検出され,明らかに腸管での定着,増殖が認められた。
組織学的には,病変部は腸管粘膜に最も高度であり,リンパ〓胞の反応は明瞭で,そこに一致して巨大な菌集落が認められた。炎性細胞反応は細網細胞と組織球性細胞の増生が著しく,これに好中球浸潤を伴う像であった。これらの特徴は菌投与後1日目から5日目の回腸で最も顕著であり,本実験での主感染部位と特徴ある所見とは剖検例にみられた病変の局在性とかなり相似を示すものであろう。腸間膜リンパ節や脾ではリンパ〓胞の反応と細網細胞の増生がみられたに過ぎなかった。
投与菌に対する血中抗体価は菌投与後5日目で最高凝集素価1:1280を示し,抗体価の測定が本菌感染症の診断的価値のあることを示唆していた。

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