抄録
ブドウ球菌の耐塩性の機構を明らかにするため,外界塩濃度の変化にともなう菌の生理的適応変化について検討した。
ブドウ球菌が各々0.1M, 1.0M, 1.8Mの食塩含有培地で生育すると,その菌体内遊離プロリン量はそれぞれの外界塩濃度に相対して0, 428, 1440μmoles/g dry weightと増加していた。その高塩濃度環境に適応する速さを検討するため,0.1M食塩含有培地で生育した菌を1.8M食塩含有培地へ移し培養したところ,15分間の誘導期があり,その後再び増殖を始めた。この時の菌体の含水量は,塩濃度転換直後に1.70g/g dry weightから0.80g/g dry weightに減少し,同時に菌体の収縮が観察された。一方,菌体内遊離プロリン量は培地から温度依存性の反応機構で取り込み蓄積され,塩濃度転換30分後には1400μmoles/g dry weightに達し,それにともない含水量は0.88g/g dry weightまで回復した。
1.8M食塩含有培地で生育した菌(菌体内にプロリンを蓄積している菌)を0.1M食塩濃度に移すと,低温条件でもプロリンを菌体外に放出した。
これらのことから,ブドウ球菌は外界浸透圧変化に対して初期反応として菌体内の水と遊離プロリンの量を変化することにより耐浸透圧性を発現していることがわかつた。