ウエルシュ菌Clostridium perfringens type A NCTC 8238芽胞内における陽イオン交換部位を明らかにするため,塩基交換法により作製したCa, Sr芽胞およびnative芽胞にこついて3種類の方法,1)細胞破砕法,2) DTT抽出法,3) EDTA抽出法によつて分画し,各画分中のCaおよびSrを定量した。
Nativeおよび各イオン型芽胞の1)法により得られた可溶性画分中のCaおよびSr含量は,不溶性画分中のそれらに比べてはるかに多かつた。しかし,細胞破砕中に交換型陽イオンの再配分の起こる可能性が示唆された。2)法では,3芽胞とも,CaおよびSrの大部分がDTT抽出後のリゾチーム可溶画分中に存在していたが,Sr芽胞においてはDTT可溶画分中のCaが減少し,かわりにSrが検出された。Sr芽胞中のSrのほとんどが,3)法によるEDTA可溶画分中に存在していた。以上の結果から,交換型陽イオンのCaおよびSrは芽胞外層に分布していることが示唆された。さらに,Sr芽胞のEDTA抽出前後におけるX線微小分析の結果から,交換型陽イオンのSrは芽胞外層,すなわち大部分がコートに,一部が多分コルテックスの表層部に分布していることが認められた。