抄録
実験的に生体防御機能を低下させた動物を用い,細菌感染に対する生体防御機構を明らかにし,これらに対する免疫賦活剤の有用性を検討した。
Cyclophosphamide, Hydrocortisone, CarrageenanおよびMitomycin Cの投与は,Pseudomonas aeruginosa, Listeria monocytogenesらの細胞外および細胞内増殖菌による感染に対し,マウスの生体防御能を著明に低下させた。とくにCyclophosphamideとHydrocortisoneとは宿主の感染防御機能の主因である食細胞に対する作用が異なり,前者が好中球およびMacrophageの数を著しく減少させるのに対し,後者は食細胞機能の低下,すなわち好中球のchemotaxis能およびMacrophageの貪食殺菌能を低下させた。
各種の免疫賦活剤を正常マウスに投与し,その腹腔内食細胞のP. aeruginosaおよびCandida parapsilosisに対する貪食殺菌能とP. aeruginosa感染に対する防御能を比較した結果,Immunoactive tetrapeptide (IATP)の(D)-lactoyl-(L)-alanyl-γ(D)-glutamyl-(L)-meso-diaminopimelyl-(L)-glycineがあらゆる点でもつとも強い賦活作用を示した。またIATPはCyclophosphamideまたはHydrocortisone処置マウスに対しても感染に対する防御能を増強した。これは前処置によつて減少した食細胞数,または低下した食細胞の機能を回復したことに起因した。さらにIATPは免疫能低下マウスのP. aeruginosa感染に対し,GentamicinおよびTicarcillinとの併用でこれら抗生物質の治療効果を増強した。
CyclophosphamideおよびHydrocortisoneの処置によつて惹起されたImmunocompromised hostに対する免疫賦活剤の投与は宿主の防御能の回復をもたらし,難治感染に対する有用な治療手段としての可能性を示唆している。