日本細菌学雑誌
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Enterococcus属のPBPsに対するセフェピムおよびアンピシリンの結合親和性
神 智恵子
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1992 年 47 巻 2 号 p. 373-385

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抄録

Enterococcus属のβ-ラクタム剤への耐性機序は,薬剤とペニシリン結合タンパク質(PBPs)との結合親和性の低下により説明出来ることから,本研究では以下の菌株を用いてEnterococcus属のβ-ラクタム剤耐性機序の解明を行った。使用菌種はStreptococcus pyogenes, Enterococcus faecalis, Enterococcus faecaumおよびEnterococcus aviumを用い,β-ラクタム剤はセフェム系抗生物質の代表としてcefepime (CFPM),ペニシリン系抗生物質の代表としてampicillin (ABPC)を用いた。
結果として,S. pyogenesではCFPMおよびABPCはすべてのPBP画分に高い結合親和性を示し,E. faecalisではCFPMはPBP 1および特に4に対する結合親和性が低く,ABPCはPBP 5を除くすべての画分に対して親和性が高かった。またペニシリンおよびセフェムに耐性を示すE. faeciumではCFPMはPBP 5および6に対して結合親和性を示さず,このうちPBP 5には,ABPCの結合親和性も低かった。例外的にペニシリン系抗生物質にのみ感受性を示すE. faeciumでは,CFPMはPBP 5および6に対して親和性が低かったがABPCには結合親和性が高かった。
E. aviumの臨床分離株のPBPでは,CFPMはPBP 1以外のすべての画分に対して結合親和性が低く,またABPCはPBP 3および6に対し結合親和性が低かった。セフェム系抗生物質に中等度耐性そしてペニシリン系抗生物質に感受性を示すE. aviumでは,CFPMはPBP 2および5への親和性が低く,ABPCはPBP 2, 4および5にある程度の結合親和性を示したが,PBP 6が欠けていた。
E. aviumのCFPMおよびABPCに対する耐性の主要因は結合親和性が低下したと考えられるPBP 3および6の存在が薬剤に対するE. aviumの自然耐性のしくみであると考えた。

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