日本細菌学雑誌
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1975∼1989年に食肉衛生検査所へ搬入された健康豚のサルモネラ保菌状況とその血清型
吉田 孝治高橋 勇澤田 拓士
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1995 年 50 巻 2 号 p. 537-545

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抄録

豚におけるサルモネラの保菌率は,家畜の中でも高いといわれており,公衆衛生上からも問題視されている。しかし国内における豚のサルモネラ保菌に関し,長年にわたり多数の検体を調査した成績はない。著者らは,東京都,埼玉県および茨城県の3ヶ所の食肉衛生検査所において豚のサルモネラ保菌調査を1975年∼79年(70年代後半期)と1984∼89年(80年代後半期)の延べ11年間にわたり行った。採材は出荷業者毎に区分したグループ単位で行い,1グループから健康な個体を対象として4∼5頭を無作為に選出した。調査は70年代後半期に計271グループの1,341頭,80年代後半期に計345グループの1,717頭で,総計616グループ,3,058頭の盲腸内容からサルモネラの検出を試みた。その結果,13.3%(408頭)からサルモネラが検出された。検出期間別でみると,70年代後半期には23.1%であったが,80年代後半期には5.7%と明らかに検出率の低下が認められた。また,グループ別での検出率をみても70年代後半期には52.0%であったが,80年代後半期には17.1%と,ほぼ3分の1に減少した。検出されたサルモネラの合計は1,037株で,血清型は28種であった。それらのうち主な型はSalmonella typhimuriumが26.1%,S.derbyが25.4%,S.londonが9.5%であった。しかし,各血清型の検出率は調査年次により変動がみられた。また,1頭から複数の血清型が分離された例は2種が37頭(9.1%),3種が1頭(0.2%)であったが,これらの38頭中S.typhimuriumあるいはS.derbyが含まれていたものが27頭であった。以上のように,豚におけるサルモネラの検出率は,70年代後半期には比較的高かったが,80年代後半期には急激な減少が認められた。これらは全国的な豚のサルモネラ保菌の傾向の一端を示しているものと考えられた。

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