日本細菌学雑誌
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黄色ブドウ球菌の消毒剤耐性
笹津 備規
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1996 年 51 巻 3 号 p. 755-765

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抄録

黄色ブドウ球菌の消毒剤耐性株はMRSAの出現とともに報告された。消毒剤耐性の機構はいづれも膜蛋白による細胞からの薬剤の排出であり, 化学構造の異なる各種消毒剤に対し多剤耐性を示すことが特徴である。現在, 消毒剤耐性遺伝子としてはqacA, qacB, qacC (ebr, smr), qacC', qacDがブドウ球菌から, qacFがバチラス属の細菌から, qacE, qacEΔ1, EBRがグラム陰性桿菌から分離されている。qacA/B遺伝子は非常に類似した12回膜貫通型の膜蛋白をコードしており, 高度耐性を示す。他の遺伝子がコードしている蛋白は, 4回膜貫通型の小さな膜蛋白で, 低度耐性を示す。また, これらの消毒剤耐性遺伝子をもった菌株とは異なる, トリクロサン耐性黄色ブドウ球菌株が出現してきている。MRSAに対する消毒剤の使用量が増加するのに伴い, 新たな耐性遺伝子の出現が予想される。

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