日本細菌学雑誌
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大腸菌耐熱性エンテロトキシンの生合成と成熟化過程
岡本 敬の介山中 浩泰
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1996 年 51 巻 3 号 p. 767-787

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抄録

毒素原性大腸菌が産生する耐熱性エンテロトキシン (ST) にはSTIとSTIIの2種類が存在する。菌体外に放出されたSTIは18個もしくは19個のアミノ酸, STIIは48個のアミノ酸からなるペプタイドである。両STはともに前駆体として生合成される。菌体内のサイクリックAMPは両ST遺伝子の発現に影響をあたえる。細胞質で生合成された前駆体STはアミノ末端に存在するシグナルペプタイドを利用し, sec依存的に内膜を通過し, ペリプラスム中に移行する。移行したSTは酵素dsbAの作用をうけて, 分子内ジスルフィド結合が架橋される。ジスルフィド結合が架橋されたSTは大腸菌が保有する機能を利用して外膜を通過し, 菌体外に分泌される。このジスルフィド結合の形成と内膜, 外膜の二層の膜の通過はSTの成熟化にとって大切な問題である。本総説ではこのSTのジスルフィド結合の形成と膜通過過程を紹介するとともに, 他の細菌性タンパクの膜通過機構についても述べた。

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