日本細菌学雑誌
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枯草菌の芽胞形成開始におけるリン酸リレー系の調節とシグマ因子の活性発現カスケード
杤久保 邦夫安田 陽子
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1996 年 51 巻 3 号 p. 789-801

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抄録

枯草菌の栄養細胞が外部環境の変化や細胞内部の代謝の変化を感知して芽胞を形成し始める時, 栄養源の欠乏, 細胞の濃度, DNAの複製, 染色体の分配などがシグナルとなって多成分リン酸リレー系に伝達される。多成分リン酸リレー系はKinA, KinBなどのセンサータンパク質とSpoOF, SpoOAなどの調節タンパク質からなり, シグナルを感知したセンサータンパク質はリン酸化された後, リン酸基の授受によって調節タンパク質であるSpoOFにシグナルを伝達する。SpoOFはこのシグナルをSpoOBを経由してSpoOAに伝達する。活性化 (リン酸化) されたSpoOAは芽胞形成開始期における転写調節因子として重要な役割を果たしており, spoOA遺伝子を含む多成分リン酸リレー系のいくつかの遺伝子の発現を調節するとともに, spollA, spollE, spollGオペロンの発現を促進して, 芽胞形成の第2段階へ進むために必要ないくつかの調節タンパク質やシグマ因子の転写を活性化する。シグマ因子カスケードの誘導により, 芽胞の形態形成に必要なタンパク質が順次合成されてくる。

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