抄録
滅菌した河川水中に腸管出血性大腸菌O157を接種し, その生菌数, 顕微鏡による全菌数, および直接法生菌数 (Direct Viable Count, DVC法) の変化を調べた。生菌数は時間を追って減少したが, 全菌数とDVCは少なくとも1月以上ほぼ同じ値を保ち続け, O157が, Viable but non-culturable state (VBNC), つまり生きてはいるが培養できない状態に陥ることを確かめた。次いで5か所から得た天然河川水にDVC法を適用した後に蛍光抗体法を行ったところ, 約102/ml程度の菌が常にO157抗体に反応することがわかった。結論として, 腸管出血性大腸菌O157は天然河川中にVBNCの状態で常在する可能性が大きい。