抄録
シクロフォスファミド (CY) 処理により作製した免疫能低下マウスにメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) のリファンピシン耐性株 (Staphylococcus aureus 1-6RFPr) を静脈内接種し, 全身オートバクテリオグラフィー (ABG) により感染マウスにおける菌分布およびその局在を経時的に観察した。CYの250mg/kgを腹腔内投与した4日後にS. aureus 1-6RFPrの約107cfuを接種し,さらにCYの100mg/kgを菌感染日から1日1回4日間連続投与した。その結果, 感染1日後には全身の各種臓器・組織, すなわち, 肝臓, 脾臓, 消化管, 腎臓, 膀胱, 骨 (骨髄) から多数の菌集落が検出された。感染3日後には菌の分布およびその局在には大きな変化はなかったが, 死亡例が発生した。免疫低下状態におけるMRSA感染症のマウスモデルでは, 感染菌が消化管ばかりでなく, 尿路系およびリンパ造血系組織においても定着し, 増殖することが明らかになった。