日本細菌学雑誌
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Treponema denticola の表層成分の病原性解析
石原 和幸
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2001 年 56 巻 2 号 p. 413-420

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抄録
成人性歯周炎の病原体である Treponema denticola は菌体表層の outer sheath に proryl-phenylalanine specific protease (dentilisin) を持っている。精製によって本酵素は, 72kDa, 43kDa, 38kDaの3つのタンパクの複合体であることが明らかとなった。この3種のタンパクのうち72kDaと43kDaのN-末端アミノ酸配列を決定し, それに基づいて遺伝子をクローニングし解析を行った。72kDaタンパクは Bacillus subtilis のセリンプロテアーゼ subtilisin の活性中心と相同性を持ち, その欠損株が dentilisin 活性を失うことから72kDaタンパクがプロテアーゼ活性を司っていることを明らかにした。Dentilisin 欠損株では疎水性の低下と, Porphyromonas gingivalis, Fusobacterium nucleatum との共凝集性が上昇していた。さらに, major outer sheath protein の oligomer 形成も阻害されていた。マウスの側腹部へ生菌を接種し膿瘍形成能を比較すると, dentilisin 欠損株は親株に比べて膿瘍形成能が低下していた。これらの結果は dentilisin が, T. denticola の病原性に関与していることを示している。
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