抄録
一酸化窒素 (nitric oxide, NO) は, 循環系・神経系の情報伝達にとどまらず, 感染・炎症・免疫反応のメディエーターとして機能し, さらには免疫反応の調節, アポトーシスの制御, 発癌など幅広い生命現象にかかわっていることが明らかにされつつある。この様な多彩な活性は, NOそのものによる直接的作用のみならず, パーオキシナイトライトなどのNO由来の反応性窒素酸化物により間接的に発現されることもわかってきた。興味あることに, NOは感染症においてほぼ普遍的に産生され, 生体内で抗菌活性を発揮するだけでなく病原体と宿主の相互作用を修飾する重要な役割を演じている。感染防御と病態形成におけるNOの多彩な生物活性の解明は, 21世紀における感染病因論の新たな展開の糸口となるかもしれない。