日本細菌学雑誌
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ヘリコバクター・ピロリの持続感染機構の研究
酵素化学, 分子遺伝学から病原微生物学へ
中澤 晶子
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2001 年 56 巻 4 号 p. 557-572

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抄録

私は共同研究者と共に, ヘリコバクター・ピロリのウレアーゼ遺伝子を特異的に破壊し, 欠損株は胃内に定着できないことを, ヌードマウス感染モデルを用いて証明した。また本菌が尿素走化性と炭酸水素イオン走化性を持つこと, 運動は粘液中で亢進すること, 粘液中での運動にはウレアーゼが必要であることを明らかにした。さらにウレアーゼオペロンの転写産物解析により, 酵素活性化の最終段階で働く蛋白遺伝子mRNAが, 中性で分解され酸性で安定化されることを明らかにした。これらの成績から私は, ヘリコバクター・ピロリの持続感染機構として, 胃粘膜細胞表層の中性領域で分裂したウレアーゼ活性が低い細菌が, 粘膜表層から遊離し胃酸に曝露されると, ウレアーゼが活性化されて酸を中和できること, 粘液層の細菌は, 尿素走化性と炭酸水素イオン走化性によって粘膜表層に回帰し, 再び分裂するというライフサイクルモデルを提唱した。

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