日本細菌学雑誌
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口腔偏性嫌気性細菌 Porphyromonas gingivalis の病原性に関する分子遺伝学的研究
中山 浩次
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2001 年 56 巻 4 号 p. 573-585

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抄録

口腔偏性嫌気性細菌 Porphyromonas gingivalis は成人性歯周炎の発症・増悪に関わる最重要細菌であり, 血液寒天培地上での黒色集落形成, 赤血球凝集性, ヘモグロビン吸着性, 糖非発酵性, 強力な菌体表面および菌体外プロテアーゼ産生性などの興味深い性状を示す細菌である。本菌の分子遺伝学的解析手段の開発を行うとともに, 本菌のスーパーオキシドジスムターゼ (SOD) 遺伝子 (sod) のクローニングおよびsod変異株の構築を行い, sod変異株が高度に酸素感受性を示すことから嫌気性菌においてもSODが酸素障害抵抗性において非常に重要であることを発見した。また, 本菌のもつ主要なプロテアーゼであるジンジパイン群 (RgpとKgpプロテアーゼ) の遺伝子 (rgpA, rgpB, kgp) のクローニンゲとそれらの欠損株を構築した。三重変異株を含むいくつかの多重変異株を作製し, 性状を検討することでこれらの遺伝子群が本菌の特性ともいえる黒色集落形成, 赤血球凝集性およびヘモグロビン吸着性に深く関与していることがわかり, 赤血球からのヘム鉄獲得蓄積機構という独特な鉄獲得戦略を明らかにした。また, RgpはFimA線毛タンパクなどの菌体表面タンパクの成熟化過程のプロセッシングを行うプロテアーゼであることを発見し, Rgpプロテアーゼが多彩な目的のためにその酵素活性が利用される“多目的酵素”であることを示した。

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