日本細菌学雑誌
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ブルセラ属菌のマクロファージ内侵入および増殖機構
度会 雅久
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2004 年 59 巻 3 号 p. 465-471

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抄録

ブルセラ属菌は人獣共通感染症の一つであるブルセラ症の原因菌である。細胞内寄生菌であり, その細胞内増殖能と病原性には密接な関係があると考えられているが, 詳細なメカニズムは不明な点が多い。ブルセラ属菌は感染初期においてファゴソームとリソソームの融合を阻害することによって, マクロファージ内で増殖すると考えられている。菌の細胞侵入時に宿主細胞膜上に存在する分子の選別が行われ, リピドラフトを構成する分子が集積し, 殆どの膜貫通型蛋白質は排除される。リピドラフトは, 種々の細菌, ウイルスおよび原虫の感染に関与することが示され, 微生物感染のゲートウェイとしての役割が注目され始めている。細菌感染におけるリピドラフトの役割を解析することによって, 菌の細胞侵入過程がその細胞内増殖に重要な役割を果たすことが明らかとなってきた。本稿ではリピドラフトがブルセラ属菌の細胞侵入時におけるシグナル伝達の場として機能すること, そしてそこで行われる相互作用に関与する分子と菌の細胞内増殖との関係について概説する。

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