日本細菌学雑誌
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サルモネラの細胞侵入と食細胞内寄生の分子機構
山本 友子高屋 明子
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2005 年 60 巻 2 号 p. 375-387

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抄録
サルモネラ感染症は, 軽微な腸炎から重篤な全身感染症まで多岐にわたっている。サルモネラ属細菌の有する主要な病原戦略は, 腸管上皮細胞への侵入, マクロファージアポトーシスの誘発, 食細胞の殺菌機構を回避して増殖する細胞内寄生である。近年, 病原性に関する分子レベルでの研究の進展により, サルモネラは複数のタイプIII分泌システムを使って様々な蛋白質を宿主細胞に輸送し, それらをもって宿主標的細胞の高次機能を巧みに制御することにより病原性を発揮することが明らかになってきた。本稿では, サルモネラ病原性発現の分子メカニズムについて, 病原蛋白と宿主成分との相互作用を基盤とした (i) アクチンサイトスケルトンの再構築による細胞侵入,(ii) シグナル伝達系の活性化による炎症やアポトーシスの誘発, (iii) メンブラントラフィックによるマクロファージ細胞内増殖の各ステップを概説する。又, 感染の各段階に遭遇する環境変化や生体防御機構に対応して発動されるサルモネラの病原性発現コントロールシステムについて紹介する。
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