日本細菌学雑誌
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赤痢菌のIII型分泌機構依存的に分泌されるIcsBタンパク質の機能に関する研究
小川 道永
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2006 年 61 巻 2 号 p. 229-233

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抄録
赤痢菌などのグラム陰性病原性細菌はIII型分泌機構からエフェクタータンパク質と呼ばれる一連の病原タンパク質を分泌し宿主細胞高次機能の調節や修飾を行い, これらの総合作用によって感染を成立させていると考えられている。著者らは赤痢菌の病原プラスミド上にコードされているIcsBのエフェクタータンパク質としての機能解析を行った。その結果, IcsBは赤痢菌のIII型分泌機構依存的に分泌され, 赤痢菌の細胞間拡散性に必須であることが明らかになった。さらに, 分子細胞生物学的解析によりicsB遺伝子欠損株は上皮細胞に侵入後オートファジーによる捕捉を高頻度に受け細胞内増殖能が低下していることが明らかになった。そこで赤痢菌感染におけるオートファジーによる菌体の認識およびその阻害機構の解明に焦点を絞って解析を行った結果, 赤痢菌感染において観察されるオートファジーは, 菌体の一極でのアクチン重合に必須のVirGがAtg5により認識されることにより誘導され, VirGとAtg5との結合をIcsBが競合的に阻害することによって抑制されることが明らかになった。
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