育種学雑誌
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作物品種の多収性の生育解析的研究 : III. 葉色の濃淡および葉の窒素含有
角田 重三郎
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1960 年 10 巻 2 号 p. 107-111

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抄録

(1)稲と甘藷で,多肥向品種の葉色が濃く,少肥向品種の葉色が淡い傾向があることが無形色明度標準色票を助けとして観察された。(2)前報において指摘した多肥向品種の同化態勢,即ち厚いあるいは立ちぎみの密集して配置された葉の状態は何れも葉の同化組織に対する光の供給を不足がちにする態勢であり,多肥向品種の葉色が濃くて可及的多くの光を吸収しているのはこのためと考えられる。これに対し少肥向品種の薄い水平的の疎散して配置された葉の状態は光飽和をもたらし易い態勢であり少肥向品種の葉はこの面より見てあまり濃く着色されるべきでない,もしくは着色される必要がないと考えられる。(3)葉の形態,向き,配置についていえば,典型的多肥向品種はある程度まで乾性植物に似ており典型的少肥向品種は陰性植物に似ていると言える。しかし葉色の濃淡に関しては逆であつて,前者が陰性植物に後者が乾性植物に似ていると言えよう。(4)大豆ではあまり明瞭でなかつたが,稲および甘藷において,多肥向品種の葉身乾重中の全窒素%含量は少肥向品種よりも大であつた。もし葉身乾重の代りに葉身窒素含量をつかえば,葉面積:葉重比率その他で見られた多肥向品種と少肥向品種の間の差異は拡大されるであろう。

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