育種学雑誌
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10 巻, 2 号
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  • 末次 勲, 伊東 達雄, 宮本 松太郎, 山崎 信蔵, 土屋 茂
    1960 年 10 巻 2 号 p. 69-74
    発行日: 1960/06/20
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    レンゲ(Astragalus sinicus L.)の自然交雑率を個体毎の場合および集団栽培した場合について検討した。個体毎の自然他家交雑率を調査するため,普通の赤花種採種栽培圃で3.3m2に一株の割合で白花種および赤花四季咲種を配置し,その次代植物について調査した結果,白花種では84.71%,四季咲種では87.62%の自然交雑率を示した。このことから蜂類の訪花頻度は花色の赤・白間ではほとんど違いがないといえよう。白花種を21.8m×21.8mの方角状に裁植し,その周囲に赤花種を裁植して,集団としての白花種と赤花種との自然交雑率を調査した結果,赤花種との距離が0~0.9mの部分では18.2%,1.8~2.7mの部分は10.0%,3.6~4.5mの部分は6.6%,それより内部は5%内外の交雑率を示した。以上の実験結果から,レンゲは自然状態では他家受精率が非常に高いが,ある個体が受精される花粉は比較的近辺の個体からのものである確立が高いことが推測され風媒花におけるとりかこみ採種法の原理がレンゲ品種の特性維持にも適用できると考えられる。
  • 村上 寛一
    1960 年 10 巻 2 号 p. 75-80
    発行日: 1960/06/20
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    稲の幼穂の分化・発育に伴う生長円錐での生理的機作を知る目的で,その一一つとして生長円錐での多糖類の分布とその変化を“PAS"反応によつて観察した。栄養生長期には,多糖類は節に多く,次いで節間やpithに多量に分布する。さらに,Pithから葉の原基に対し対称の位置にあるcambium-like zoneにかけて分布し,生長円錐に多糖類の濃度勾配(分布の地域性)がみられる。この多糖類分布の地域性は幼穂発育期の幼穂にも明瞭に認められる。生育が進むにつれて,生長円錐全体に多糖類の蓄積が増加し,幼穂分化直前に最も多く蓄積する。しかし幼穂の文化が開始されると,これが一旦減少する。分裂能をもつ組織での多糖類蓄積の増加-多糖類合成作用の低下-多糖類合成優越段階から蛋白合成・多糖類分解優越段階への変化という過程によつて器官形成がおこるとの仮説について考察した。この過程は栄養生長期・幼穂分化期および幼穂発育期のいづれでも基本的には同じであつた。感光性品種の陸羽20号が短日処理されると,成長円錐での多糖類の蓄積が抑制され,しかも幼穂分化開始期が12日間促進された。この促進効果を上述の仮説によつて説明した。
  • 渡辺 進二, 中川 元興, 牛腸 英夫, 西尾 小作
    1960 年 10 巻 2 号 p. 81-88
    発行日: 1960/06/20
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    1.芒穂型を異にする裸麦及び同一芒穂型に属する熟期の異なる品種を用いて幼穂形成期,幼穂分化過程,穂の部位別発育を主列と測列別に調査し,小穂段数の変化,穂軸節間長等の変化をも観察した。2.幼穂発育に伴うMm1とDm1との特徴は3月20日ごろから現われ,成熟期においてその差異は顕著となつた。Mm1に属する品種間における差異も認められた。3.幼穂形成期は秋播性程度の高い佐賀〓1号及び奈良早生が,秋播性程度の低い赤神力及び2号熊島より11日乃至18日遅く,その後の幼穂分化過程も穎花分化後期ころまでは遅延した。しかし幼穂形成期から穎花分化後期までの期間には大差はなかつた。4.穎花分化後期より出穂期までの期間は,佐賀〓1号及び奈良早生が著しく短かく,赤神力及び2号熊島よりも20日間ほど早まり,仲長速度の大きいことを示し出穂を早めた。又結実期間も佐賀〓1号及び奈良早生が赤神力及び2号熊島より,いくらか短縮された。5.主列における穂幅は,3月20日ころまでは各品種共穂の下部位の穂幅が中央部位より大きいか,等しかつたが,3月20日以後はこの関係は逆となり,中央部位の穂幅が大となつた。上部位の穂幅は,各品種,各育成時期を通じて下部位中央部位より狭くこの傾向は3月20日頃まで顕著であつた。6.測列における穂幅は,概ね各品種各育成時期を通じて,上部位は最も狭く,下部位の穂幅が中央部位より大であつたが,この傾向は3月20日頃まで顕著で,特に赤神力及び2号熊島によくあらわされた。一般的に側列は主列に比べ下部位の穂幅に対して上部位中央部位の穂幅は狭く示された。この傾向は早生品種殊に奈良早生において顕著であり、早生品種の幼穂の急激な伸長による小穂段数の減少と,登熟期間短縮の影響が大きいように思われた。7.幼穂長の変異は3月20日ころをさかいとして,前期は晩生品種が,後期は早生品種の伸長が大きかつた。8.小穂段数は幼穂穎花分化IX及至X期には40段内外観察されたが,成熟期には早生品種で17乃至18段,晩生品種で22乃至23段内外に減少し,早生品種の減少程度が著しいことを認めた。これは上部位,下部位小穂の退化によるものと思われる。9.穂軸節間長は穂長及び小穂段数の変異に伴なつて増加するが,成熟期の品種間差異は,奈良早生>佐賀〓1号>赤神力>2号熊島の順序となつた。これは奈良早生では長穂と小穂段数の減少により,2号熊島では小穂段数の多いことと短穂によるものと思われる。10.草丈,稈長は幼穂の伸長とほぼ並行的に推移した。11.茎数の増加は幼穂発育程度のVII乃至X期(2月10日)ころまで著るしかつたが,早生は無効分葉が多く見られた。12.大麦の品種改良においては,芒穂型の差異と同様に同一芒穂型に属する品種についても、穂長と共に穂幅殊に側列面の穂幅及び小穂段数の変異を,品種の秋播性程度及び出穂早晩性との関連において注目する必要がある。
  • 池田 長守, 宇渡 清六, 中村 勝
    1960 年 10 巻 2 号 p. 89-95
    発行日: 1960/06/20
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    オランダハッカは,従来,欧州から導入された帰化植物と考えられていたが,欧州のフロラを記載した文献に本変種は記載されてない。筆者等は,最近,中尾佐助氏が,ブータン国で採集した野生ハッカの栄養系をゆずりうけたが,このハッカは,2n=48で,まぎれもなく,わが国のオランダハッカであつた。このようなことから,オランダハッカの原産地の決定には,なお,慎重を要するのではないかという示唆をうけた。わが国のオランダハッカには,2n=54の系統と2n=48の系統とがある。形態的に変りなく,染色体数以外の点では,区別することが困難である。両者とも,自然状態では,もつぱら,栄養繁殖を行い,種子繁殖しない。しかし,両系とも,細胞学的に安定していて有性繁殖によつて,染色体数の変らない子孫を残すそこで,ハッカ属中,もつとも,染色体数が少なく,単一ゲノムからなる種と考えられる M.rotundifolia(ゲノム式RR)を分析種として,両系オランダハッカのゲノム分析を行つた。雑種F1のPMCのMIにおける染色体接合型にもとずいて,2n=54のオランダハッカにはRRScSc+a1a1a2a2a3a3なるゲノム式を,また,2n=48のオランダハッカには,RRScScなるゲノム式を与えた。ここに,RとSとは,それぞれ12の染色体から成り,前者はM. rotundifoliaと共通のまた,後者は,オランダハッカに特有のゲノムである。a1,a2,a3は,過剰の染色体であつて,たがいに,同質接合できる,部分相同染色体である。トウモロコシやライムギに見られるB-染色体に類似する準不活性の過剰染色体と推定される。
  • 有倉 保雄
    1960 年 10 巻 2 号 p. 96-100
    発行日: 1960/06/20
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    コカブの一品種である金町小蕪を用いて,集団内における選抜の効果を検討する目的で,主要な量的形質である,全重,葉長,葉数,頸部の太さ,根部の横径,根部の縦径,根形指数,直根の太さ,について,遺伝力と優性度を推定した。即ち,金町小蕪の放任授紛の集団内でbiparental crossを行い,その次代の系統による分散分析からと,花粉親と子,雌親と子,の回帰から,遺伝力を推定した。又,優性度は,COMSTOCK等の方法によつて,“a”=√(2(F-M)/M),および,σa2/σg2より推定した。推定した遺伝力の値は,全重と根部の横径では,0に近い極めて小さい値であり,その他の形質では,37~66%と推定される根形指数以外は,5~20%の低い値が推定された。又,三つの方法から得た推定値は,かなりよく一致していると考えられた。更に優性度は,根形指数では優性が働いていないと考えられ,その他の形質ではこの優性度は,この推定法による過大評価が考えられるとしても,超優性か完全優性,或は極めて完全優性に近い部分優性が働いていると思われた。従つて,根形指数以外の形質に対する選抜の効果は,遺伝力も低く,更に超優性と考えられるような優勢度が働いていると思われるので,期待することが出来ない。
  • 野口,弥吉
    1960 年 10 巻 2 号 p. 101-106
    発行日: 1960/06/20
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    感温性品種農林11号,胆振早生及び感光性品種農林18号,瑞豊を播種後30℃、,20℃の恒温及び一定期間を基準として交互に30℃.,20℃.の変温に保つて温度の出穂(花芽形成)に対する影響を調べた。その絨果,感温性品種は30℃,区では出穂までに40日,20℃.区では約80日を要し,30℃.→20℃.,20℃.→30℃、,の変温区ではその中間に出穂したが,生育時期に関係なく高温に置かれる期間の長いほど,また低温に保たれる期間の短いほど早く出穂した。従つて高温は出穂を促進する効果のあることが確実となつた。しかし,7月1日及び同8日までの低温処理区の出穂は同時であつた。農林18号は播種後30℃.区では81日,20℃.区では126日で出穂秘し,瑞豊はそれぞれ80日,117日後に開花した。感光性品種の場合も変温区の出穂はそれらの中間となつたが,何れも9月終りまでは出穂が見られず,日長の影響を強く受けることが照明された。一方、品種の如何にかかわらず出葉速度を早める傾向のあることが認められ,出穂に対する温度の影響を詳細に知るためには,その前提として出葉速度と温度の関係を更に究めることが必要であると考えられた。
  • 角田 重三郎
    1960 年 10 巻 2 号 p. 107-111
    発行日: 1960/06/20
    公開日: 2008/05/16
    ジャーナル フリー
    (1)稲と甘藷で,多肥向品種の葉色が濃く,少肥向品種の葉色が淡い傾向があることが無形色明度標準色票を助けとして観察された。(2)前報において指摘した多肥向品種の同化態勢,即ち厚いあるいは立ちぎみの密集して配置された葉の状態は何れも葉の同化組織に対する光の供給を不足がちにする態勢であり,多肥向品種の葉色が濃くて可及的多くの光を吸収しているのはこのためと考えられる。これに対し少肥向品種の薄い水平的の疎散して配置された葉の状態は光飽和をもたらし易い態勢であり少肥向品種の葉はこの面より見てあまり濃く着色されるべきでない,もしくは着色される必要がないと考えられる。(3)葉の形態,向き,配置についていえば,典型的多肥向品種はある程度まで乾性植物に似ており典型的少肥向品種は陰性植物に似ていると言える。しかし葉色の濃淡に関しては逆であつて,前者が陰性植物に後者が乾性植物に似ていると言えよう。(4)大豆ではあまり明瞭でなかつたが,稲および甘藷において,多肥向品種の葉身乾重中の全窒素%含量は少肥向品種よりも大であつた。もし葉身乾重の代りに葉身窒素含量をつかえば,葉面積:葉重比率その他で見られた多肥向品種と少肥向品種の間の差異は拡大されるであろう。
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