抄録
1. ミツマタの高知種の倍数性の由来を明らかにするため,静岡在来種との間に正逆交雑をおこない,F1植物の成熟分裂における染色体対合の状態や,諸形質についてしらべた。2. F1植物の成熟分裂においては対合の81%が18IIであり,2Iの出現頻度は約4%であり,約15%が1IV~3IVを持つ核板であつて,その他には異状は認められなかつた。これらのことから高知種も静岡種と同じく同質性の四倍体と考えられた。3. F1植物の樹形,又下高,分枝数,着花数などの外部形態は両品種の中間型を示した。4. 気孔の大きさ,孔辺細胞内の葉緑粒数,花粉粒の大きさなどには両品種間に差がみとめらなれかつた。5. F1植物の花粉稔性は両品種よりやや低く80%を示した。6. 高知種は自家受粉ではほとんど種子を着けないが静岡種との品種間交雑では約45%の種子稔性を示した。7. 高知種の単せん維の長さは静岡種より約5%ほど長い。F1も大体前者のと等しい。8. F1植物に高知種を数代戻し交雑をする方法や,倍数体利用(高知8x×静岡4xなど)が育種技術として有望と考えられた。