育種学雑誌
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大麦の凍霜害に関する研究 : 第1報生育冬期における低温障害の品種間差異
町田 暢御子柴 公人山口 和重
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1961 年 11 巻 4 号 p. 307-313

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抄録
大麦の凍霜害低抗性の品種間差異を明らかにしようとして,耐寒性の強いコウゲンムギと弱いみすず大麦を供試し,その生育各期に一5℃の低温定温器で6時間処理して,低温障害の差異を調査した。(1)低温による障害は著しく,生育を遅延させた。また,収量に影響甚しい時期は伸長期から穂孕期であった。(2)茎葉に及ぼす障害の程度は耐寒性の強いコウゲンムギに甚しく,弱いみすず大麦は軽微であった。(3)幼穂の凍死は幼穂長と関係し,幼穂長が6mm以上になると凍死するもの多く,5mm以下では少たかった。これはまた,桿長と密接に関係し,桿長が長く,幼穂が地表に現われやすくたるほど凍死率は高くたった。しかし,幼穂そのものの凍霜害低抗性の品種間差異は認めることができたかった。(4)凍霜害による幼穂の生死の判別にはLUYET氏溶液による染色が有効であることが明らかにされ,それによれば,幼穂の凍死には,(i)幼穂そのものが凍死する場合(ii)幼穂に続く幼桿数節が凍死し,二次的に幼穂も枯死する場合(iii)両者が凍死する場合以上の三段階のあることが判明した。
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