育種学雑誌
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稲の遠縁品種間雑種における細胞質的不稔性に関する研究 : II.細胞質的不稔性に関与する日本稲核内遺伝子の分析
北村 英一
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1962 年 12 巻 3 号 p. 166-168

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抄録
1.Ta820は,フィリピン稲Tadukanを1回親として農林8号を反復親(♂)とする3回の戻し交雑の後代から育成された系統である。この系統は1回親に由来する細胞質の関与によって低度の不稔性を示す。2.Ta820を母とし日本稲を父とするF1はすべて細胞質的不稔性を示し,その不稔の程度によって供試日本稲は高不稔性をもたらす品種と低不稔性をもたらす品種とのおよそ2群に分けられる。3・日本稲品種の細胞質感受性遺伝子を分析するために,被分析品種の相互間交雑のF1植物の花粉をTa820に交雑し,次代の不稔変異を調べた。その結果,F1に高不稔性をもたらす品種は,Ta820の細胞質と相互に働いて不稔性の発現に関与する優性遺伝子をもち,低不稔性をもたらす品種はこれに対立する劣性遺伝子をもつものと認められた。この細胞質的不稔性には,かようた主働遺伝子のほかこれらの作1周を強調または抑圧する変更遺伝子群,ポリジーンが関与するものと推定された。
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