抄録
(1)M. gentilisの形態的特徴を備えている11系統を供試して,これを記載と比較し,10系統がM. gentilis L.f. cardiaca (SM.) BRIQ.に属するものと鑑定した。(2)供試系統の形態,染色体数ならびに,減数分裂の核像を,M. arvensis L. var. piperascens MAL. (日本ハッカ,2n=96)×M. spicata L. (var. crispa BENTH.を含む)(2n=48)のF1(2n=72)のそれらと比較してその間に顕著な類似を見出し,供試のM. gentilis L.f. cardiaca (SM.)BRIQ.が上記交雑に起原するものと認定した。(3)供試M. gentilis L.f. cardiacaは,(一)一carvoneを精油主成分とする系統と,(一)一menthol,(一)一menthoneを精油主成分とする系統との2群に分たれるが,前項F1にも,(一)一carvone系の栄養系とヨ(一)一menthol,(一)一menthone系の栄養系の存在することを見出した。この一致は,前項の認定を裏書する有力な資料と考える。(4)欧州から送られた残りのユ系統は,2n=120で欧州に分布する2n=72のM. avensisと,2n=48のM. spicataとの雑種F1(2n=60)の染色体数の倍加によって生じた複2倍体であると推定した。(5)Scotch spearmintは,北米合衆国で,M. cardiaca GERARDEたる学名をもって呼ばれ,スペアミント油をとるために広く栽培せられているが,本種を,日本ハッカ×M. spicataのF1と比較し,また,F1の広い形態的変異の幅を考慮に入れて,M. cardiacaは,M. gentilisと別種ではなく,M. gentilisの1つのformであって,HEGI等(1914)にしたがって,M. gentilis L.cardiaca (SM.) BRIQ.なる学名を用いるべきであると考えた。