育種学雑誌
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てん菜の自家不稔性におよぼす遮光処理の影響について
細川 定治加藤 勝信
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1963 年 13 巻 4 号 p. 229-234

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抄録

てん菜の自殖種子を得ることを目的として,母根を縦割にして2つの栄養系にわけ,その一方に対して勇葉,および遮光処理をおこたって交配した場合,その自家不稔性にいかたる影響をおよぼすかについて1952~1954年にわたて調査をおこたった。その結果をつぎに要約した。1.てん菜の自殖による結実は一般に非常に困難でおるが,同一一個体の栄養系の一方に対して勢枝,勇葉および遮光処理をおこたって交配をした場合,最高16%の稔実が得られた。2.遮光処理の場合,同一栄養系の処理区の方に結実歩合が高かった。 3.遮光処理に藩および花粉の異常が多少認められ,また雌雄蕊のいづれも処理によって酸化還元電位に差異を生ずることが認められた。4.葉柄テストによって生体栄養の簡易測定をおこった結果,とくに処理区に硝酸態窒素および燐酸の多く集積する傾向があった。以上の結果からして,個体や系統間の差異はあっても,同一栄養系の一方に遮光だとの処理をおこなって自家不稔性を変化させ,自殖種子を得る可能性が認められた。

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