抄録
著者らが近年稲の生態群間雑種の稔性、出穂期などの調査に使用した品種は、すべて頴の成熟色が正常(黄)であった。しかるに、それらのF1雑種では頴の成熟色が黒くなるものが甚だ多かった。その場合には例外なく、一方の親はフェノール着色反応を示す(+)品種であり、他方の親はフェノール反応を示さたい(-)品種であった。(-)品種間の雑種ではF1の成熟頴色は常に正常(黄)であった。この関係は、フェノール反応(+)の29品種と(-)の24品種の間の54組合せのF1および、(-)の42品種間の36組合せのF1において例外なく認められた。このことは頴の成熟色の発現には2つの補足遺伝子を必要とし、その1つは従来のフェノール着色遺伝子であることを強く示唆する。これを確認するため、1960年と1965年に、数個の代表的品種組合について後代の調査を行った。