抄録
コルヒチン処理によって得た栽培イネ(Oryza sativa L.)の4倍体(AAAA,2n=48)数品種を母とし、同じくコルヒチン処理によって得た野生イネ、O. latifolia DESV.および0.minuta PRESL.の8倍体(CCCCDDDDおよびBBBBCCCC、ともに2n=96)を父として交配を行い、胚培養によって2種類の異質6倍体を得た。両者ともに根端で2n=72が確認され、ゲノム構成はそれぞれAACCDDおよびAABBCCとなる。自然の短日条件下では止葉よりの穂の抽出が困難で、抽出したものも一見正常と思われる小穂はほとんど着生せず、白穂となる。生育全期間を温室内で経過したものは、晩秋に至り自然日長が短かくなるに及んでやや正常な穂を抽出したが、いずれの条件下でも複2倍体、sative-minutaの穂の抽出困難が目立った。着生した小穂は両複2倍体すべてが葯の発達不良もしくは欠除を示し、雄性不稔を呈した。子房は形は小さいがやや正常な機能力を示し、両親種の花粉で若干の交雑種子を生じた。イネ属では栽培イネのAゲノムを含む自然の複2倍程は知られていないが、かかる型の雄性不稔が少なくともその原因の一部をなしているものと考察した。