育種学雑誌
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水稲における耐冷性の遺伝と選抜に関する研究 : IV.耐冷性に関するF3系統選抜の直接効果および間接的作用
蓬原 雄三鳥山 国士
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1969 年 19 巻 4 号 p. 286-292

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抄録
水稲品種組合せ、染分×青森5号を供試して、耐冷性に関するF3系統選抜の効果について検討した。耐冷性の選抜は強、弱2方向へそれぞれ選抜率10%および20%の強さをもって行なったが、選抜の効果はいずれの場合にも顕著に認められた。一方、選抜の間接的な作用として、耐冷性強方向への選抜においては、長稈、大穂、少げつ型、すなわち、染分型への偏りがみられ、弱方向への選抜においては、短稈、小穂、多げつ型、すなわち、青森5号型への偏りが認められた。とくに、強い耐冷性の選抜を行なった場合に顕著な偏りが認められたことは、実際の耐冷性選抜上、留意すべき点であろう。一方、出穂期、1穂粒数については有意な選抜の間接的効果は認められなかった。このような耐冷性の選抜の直接効果および間接的にみられる効果について、期待値をLERNERの方法によって推定し、実測値と比較した結果、直接選抜の対象となった耐冷性、およびそれと遺伝相関の高い稈長、穂長については両者はかなりよく一致した。したがって、本研究で推定したこれらの形質に関する遺伝力および遺伝相関値は一応実用的に信頼しうる値と考えられ、またこれらの遺伝統計量を用いて、耐冷性の選抜による直接効果および間接的作用を推定することはほぼ可能といえよう。一方、環境変動が大きく、あるいは間接的作用の小さかった穂数、1穂粒数および出穂期については、期待値と実測値との適合度は低かった。
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