抄録
33組み合わ昔のF1雑種およびその12の現品種の生育を、相互遮蔽の無い状態での水耕栽培条件下で観察した。栄養生長期における体重、植物体内全窒素量、葉面積、根重の全体重中に占める割合、分けつ数、葉長等においては、ほとんどの組み合わせのF1が中間親より高い値をとり、半数以上の組み合わ昔のF1が高い方の親よりも高い値をとった。一方、植物体内窒素含有率においては、ほとんどの組み合わせのF1が低い方の親よりも更に低い値をとった。葉幅と葉の厚さにおいては、顕著なヘテロシスは見られず、また出葉率においてはヘテロシスは存在しないといい切れるようである。各形質における相対的ヘテロシス程度は、生育初期の体重において最も高かった。本実験と並行して行なった、各栄養生長形質間の遺伝的相関度に関する実験の結果を考え合わせて、稲においてヘテロシスが最初体重に存在し、各々形質におけるそれぞれの程度のヘテロシスは、体重におけるヘテロシスが、形質間の発育的相関表係を通じて、各々の形質に伝えられた結果によるものであると考えられる。稲におけるヘテロシスの大部分は、栄養生長旺盛度の促進として理解できる事が指摘され、一般的にF1が高収である事は、広い栽培密度とか、遺伝的混合集団においては可能であるかも知れないが、実際圃場での遺伝的に斉一な集団条件ではあまり期待できない事が論議される。