主催: 日本臨床薬理学会
会議名: 第42回日本臨床薬理学会学術総会
回次: 42
開催地: 仙台
開催日: 2021/12/09 - 2021/12/11
わが国の新生児医療は国際的に高い水準を維持しているが、その薬物療法においては、適応外使用がほとんどである。しかしながら新生児用の医薬品開発は、決して容易ではない。欧米では小児用の医薬品開発のスキームが整い、新生児の薬物開発へも視点が移り、わが国も新生児医療への効果的かつ安全な治療薬導入の促進に向けて、国際的な新生児用医薬品開発促進のための組織(INC(International Neonatal Consortium))と連携して活動している。INCとは米国の非営利団体であるCritical Path Institute(C-Path)が2015年5月に開始したコンソーシアムで、新生児の薬物治療の効果や安全性を評価するための指標を作成し、国際共同臨床試験を行い、新生児によりよい治療を提供することを目的としている。研究機関や製薬企業、アメリカ食品医薬品局(FDA)、欧州医薬品庁(EMA)、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)などの規制当局、その他の関連団体の関係者により組織され、製薬企業や医師だけでなく、看護師や患者団体も含まれている。現在のわが国での活動はAMED研究班「小児医薬品開発の実用化国際連携に資するレギュラトリーサイエンス研究」(研究代表者:中村秀文)の分担研究(分担研究者:楠田聡から平野慎也)として2016年から国内体制の整備およびINCとの国際連携を行っている。具体的には、わが国の新生児医療の専門家がINCの各ワーキンググループ(WG)に代表として参加し活動している。それぞれのWGは新生児用医薬品開発を世界的に促進するために重要な課題を設定し、その解決策の提示を目標に活動している。WGは、神経疾患、慢性肺疾患、壊死性腸炎、データベース、有害事象、循環動態、検査値、用語定義、疼痛管理、薬物離脱症候群、コミュニケーション、イノベーションである。国内担当者は、オンラインで開催される会議で議論し、必要なデータを提供することで、INCの活動に国際協力している。また、米国のFDAまたは欧州のEMAでの会議(1回/年)に参加している。INCの各WGの活動を通じて、わが国との新生児医療技術および知識の交流が促進され、新生児医療のさらなる向上と、世界共通の新生児医薬品開発研究計画書の作成を可能とし、新生児薬物療法開発の促進に繋がることが期待される。