抄録
水稲における耐冷性に関する初期選抜の効果および耐冷性の選抜がその他の実用形質におよぼす影響について、実際に育成中の5つの交雑集団を用いて実用的見地から検討を行った。その結果、耐冷性は数コの優性主働遺伝子支配による量的形質であることが認められ、これまでにえられた結果が実証された。また組合せによっては、耐冷性に関して超越系統の出現することが認められた。一般に、耐冷性に関して、ほ場観察にもとづくF3個体選抜(選抜率1%)、および実測値にもとづくF4系統選抜(選抜率20%)の効果をともに認めることができたが、その効果は系統選抜の方がはるかに大きかった。耐冷性の選抜がその他の実用形質におよぼす間接的影響を各形質の平均値および分散の変動より検討した結果、一般に、平均値については、収量ではほとんど影響は認められなかったが、稈長および穂長は正の方向へ、穂数は負の方向へ偏り、一方、分散については、いずれも減少する傾向が認められた。しかし、これらの選抜による直接効果および選抜による諸形質の偏りは組合せによってかなりの差異が認められた。以上の結果および前報までの結果を総合して、耐冷性品種育成上の問題点について若干の考察を行い、実用的な耐冷性品種の育成方式についての一試案を作成した。