育種学雑誌
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ハッカ属植物の放射線育種に関する基礎的研究 : XVI.生理的および形態的形質に関する放射線感受性
小野 清六
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1975 年 25 巻 1 号 p. 24-31

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抄録

1)ハッカ属の染色体数およびゲノム構成の明らかな第I亜属の2種と第II亜属の12種,種間雑種および人為倍数体21系統の合計35の種および系統(第1表参照)の種子,生体または栄養茎に種々の線最(5~60kR)のX線およびγ線を照射し,草丈,花粉稔性および種子稔性の主要形質を用いて放線線感受性を調べた。 2)放射線感受性は,供試した種または系統によって異るが,それぞれのもつ感受性の大小関係は,用いた標識形質の種類とはほぼ無関係であった。 3)染色体数の増加にともなって感受性が高くなる傾向があり,6x種(2n=72)の中に最も高感受性のものが認められたが,8x種(2n=96)は他のどの種よりも低感受性であった。 4)放射線感受性の種間差異は主としてゲノム構成によるもので,各ゲノムの放射線に対する抵抗性の強さはA>R>S>Jの関係にあるのではないかと推定される。とくにM.arvensis L. var. piperascens (8x,2n=96)たどに含まれるAゲノムは著しく強い放射線抵抗性を有するものと推定され,ハッカの放射線利用による育種に興味深い示唆を与える。 5)放射線感受性は染色体数とゲノム構成の両面から制約されるので,異質倍数体間で一定の法則性を見出すのは困難であるが,これらの人為倍数性系列に関しては,染色体数の増加にともなって明らかに放射線感受性が低くなる傾向を認めることができる。 6)種間雑種F1の放射線感受性は概して両親の中間に位置するが,両親の感受性が比'較的低い場合にはしばしば両親よりさらに低くなる。いわゆる雑種強勢的現象がみられる。7)ハッカの植物体内に含まれる化学物質の種類および含量の多少が放射線感受性の強弱に重要な働きをするのではないかと推定される。

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