育種学雑誌
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ダリスグラスにおける雑草性の機構
森島 啓子
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1975 年 25 巻 5 号 p. 265-274

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抄録

ダリスグラスはアポミクシスを行う多年草で,わが国には牧草として導入される以前から雑草として定着している。本実験はこの種の持つ雑草性,すなわち撹乱環境に対する適応性の機構を知るために行なったものである。熊本・宮崎・静岡の各県で採集した20の自生集団を用いて,1)各種形質の変異,2)ふみつけ反応性,3)スズメノヒエおよびメヒシバとの競争を調査した。得られた主な結果は次のとおりである。 有性生殖する他の種に比べて遺伝的変異は著しく少なかった。しかし集団間および集団内に遺伝的変異が存在することが確められた。さらに,各地区の分布中心の集団より周辺の集団の方が遺伝的変異を多く含む傾向が見出された。このことはまれに起る有性生殖によって遺伝的変異を増した集団が新しい生育地に移住したことを示唆する。また,ふみつけに対する抵抗性を持つこと,表現型可変性が大きいこと,他種が占有している場所では幼植物は死亡しやすいが,混みあっていない場所では旺盛に生長し他種に勝つことなどが明らかになった。 ダリスグラスの雑草性は,ストレス抵抗性,競争力,大きい表現型可変性,無性的な種子による移住力に基づいているのであろう。その雑草性を発現する遺伝子型はアポミクシスによってそのまま繁殖すると考えれる。

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