育種学雑誌
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高蛋白米品種の育種に関する基礎的研究 : II.高・低蛋白品種間交雑による高蛋白性の遺伝分析
東 正昭櫛淵 欽也
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1976 年 26 巻 1 号 p. 17-24

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抄録
フクニシキ(高蛋白)×フジミノリ(低蛋白)の雑種後代の検定およびフクニシキの高蛋白性に関する系譜的追跡調査結果に基づきフクニシキの高蛋白性の遺伝様式を検討した。F2集団の玄米蛋白含有率は平均値が若干低蛋白親方向に偏るが,その分布は正規分布に似た連続的なものであった。F2分散から求めた蛋白含有率の広義の遺伝力の推定値は0.45となり,F2-F3,F3-F4の親子相関は各々0,551,0,709と比較的高かった。また蛋白含有率と出穂期や草型との間に相関々係が認められ,早生,短稈ほど高蛋白の傾向がみられた。さらにフクニシキの高蛋白性の系譜的調査から,森田早生-農林1号-八ツニシキ-フクニシキと蛋白含有率はさほど低下することなく伝えられてきたことがわかった。これらの品種間でも高蛋白性と出穂期や草型との間に連関があるものとみられた。これらの結果からフクニシキの高蛋白性は相加的に働く複数遺伝子により支配されており,その遺伝力は比較的高く,初期世代での選抜もある程度有効であると思われた。しかし,蛋白含有率と出穂期,草型等との問に連関があり,高蛋白性の個体や系統の選抜にあたってはそれらの特性についても十分配慮したければならないと考えられた。
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